大物なかれはもうスタンダップや寸芸をしないが楽しいネタを無限に持っていた。おはこはジェームズブラウンやスティービーワンダーだが個人的に好きなのは(世代がバレるが)「自信満々(すぎる)カールルイス」。男の絶頂時の顔をやるだけの「イクときの男の顔」も楽しかった。白人にもなれてプレスリーもじょうずだった。多彩で多芸で、何をやっても適確に特長を捉えていた。SNL Eddie Murphyで検索すると一日過ごせる。
お笑いのひとは演技力がある。これは定説でまちがいない。トムハンクスとてSNLの出身である。近年ならばクリスティンウィグメリッサマッカーシーキーガンマイケルキーレベルウィルソン・・・。すぐれたコメディアンは例外なくすぐれた演技力の持ち主である。近年見たDolemite Is My Name(2019)。エディマーフィーがRudy Ray Mooreを演じていてとてもよかった。
こうした願いは、彼/彼女がコメディアンの出身者であっても、演技者として立ち位置が確立されると叶う。クリスティンウィグもメリッサマッカーシーも、今ではお笑い担当の役回りから完全に脱却し、シリアスなドラマの主役をはっている。 Mr. Church(2016)もまさにそれ、ずっと見たかったシリアスなエディマーフィーだった。(古い名前な)ブルースベレスフォード監督で映画としても手堅いつくりだったと思う。
映画は3世代の女性にとって、料理人+父親となるMr. Churchについて語っている。 Mr. Churchは鷹揚で穏健だが、じぶんのスタイルを持った黒人だった。 母親を亡くしたチャーリーに、ひとつの規則を守るならば一緒に暮らしてもいい(同居世話人になってもいい)と申し出る。──規則とはプライバシーを尊重すること。 Mr. Churchが言いたかったのは尊厳ある生き方──だったと思う。