ひこくろ

セックスで繋がる3つの世界/ZOOM ズームのひこくろのレビュー・感想・評価

4.4
主人公は三人。
胸が小さいことに悩むラブドール職人のエマ。
自分の撮りたい映画を撮らせてもらえないイケメン映画監督のエドワード。
作家志望だけど、なかなか認めてもらえないブラジル美人モデルのミッシェル。
じつは、彼らは全員、それぞれの描く作品の主人公という設定になっている。

エドワードは、エマが描くコミックの中の人物。
ミッシェルはそのエドワードが撮ろうとしている映画の中のヒロイン。
そして、エマはミッシェルが書いている小説の主人公という具合にだ。

だから、彼らの物語は作者によってどんどん変化していってしまう。
作者の心が弱まればピンチな状況にもなるし、調子がよければとんとん拍子にことが運んだりもする。
しかも、影響を受けて変わった展開は、その先の作品の人物にもさらに影響していく。
この影響が連鎖して、どんどんと話が変わっていくのがとても面白かった。

映画の大部分はコメディタッチの下ネタなんだけど、根底にはちゃんと作者と作中人物という関係性が描かれている。
それでいながら、全員が作者であり、同時に作中人物でもあるという、パラドックス的なメタ要素が映画を盛り上げる。
三つの世界が、現実的な世界、アニメーション、映画的な世界、とそれぞれ違った味で描かれているのもいい。
ラストで、それぞれが自分が作中人物だと気づき、三つの世界が一気に収束していく展開は、かなり力技だよなあとは感じつつも、熱くならずにはいられなかった。

かなり独特だし、好き嫌いも分かれそうだけど、メタフィクション物の醍醐味を存分に味わえる映画だった。
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