新潟の映画野郎らりほう

君の膵臓をたべたいの新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

君の膵臓をたべたい(2017年製作の映画)
3.2
【至白なる世界へ】


その白皙な相貌に笑顔を湛え 浜辺三波が校舎屋上の階段を昇ってゆく。
彼女の背の校舎白壁は陽光を受け その白をより白く輝かせ、彼女を 永遠に光芒の彼方へ連れ去ってしまいそうだ。
北村匠海と共に河辺を眺める場面でも、彼女の姿は 水面に反射した逆光に縁取られ今にも蒸散してしまいそうである。

映画は徹底して描く-白皙な少女が 至白なる世界に消え逝く様を-。


北村匠海や大友花恋の日焼け気味な肌色も、浜辺三波の白皙を際立たせる為に他ならないだろう。


彼女の無上の笑顔に呼応するかの様に光量過多に輝く周辺世界。そんな輝く世界で、彼女が最期に着る“純白のワンピース”、そして“真紅のリュック”が、哀哭な暗示と痛切な余韻となり胸に迫る。



キスすら交わさぬプラトニックを標榜しながらも、肉体最深次元での結合を希求するタイトル主題系から立ち上るエロティシズム。
図書好き青年のもとへ文字変換される肉体と魂、その文庫/書簡化 等 、惑溺的フェティシズム/性倒錯的因子。

図書に逃げていた交友下手な男が、交友交歓と肉体の結合を希求するも、結局は文字/図書の世界に捕らわれ続けるアイロニーでもある。




《劇場観賞》