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ビリディアナのMoviePANDAのレビュー・感想・評価

ビリディアナ(1960年製作の映画)
4.2
『虚しき哉、人生!』

ブニュエル監督作の鑑賞は、これが2作目。カンヌでパルム·ドールを受賞しながらも、バチカンから冒涜的だと批判を受け、スペイン国内で実に11年もの長きに渡り、上映禁止処分を受けていた曰く付きの問題作!いやはや、この映画が放つ求心力がなかなかに凄まじくて、心に深い爪痕を残されるかの如く強烈な作品でございました_(._.)_

修道院で暮らす見習い修道女のビリディアナ。彼女は長く疎遠だった叔父の屋敷を訪れるのですが、その叔父さんが、ハッキリ言ってちょい変態です(笑) 表面上は紳士でありながら、彼女が無き妻の若い頃の生き写しだからこそ、叔父が彼女に夢中になってしまっている事を演出がしっかり映し出します。そして彼はメイドを言いくるめ、彼女に睡眠薬を飲ませ犯してしまおうとするのですが…

脚本と演出双方に一切の隙が無く、まあ展開の早い事、早い事。もしかしたら、そこが気になってしまう方もいるかもしれませんが、ボクは完全に引き込まれました。前半と後半とで展開の流れが変わるのですが、後半は前半の受難が可愛く見えてくるほどのカオス状態に!贖罪のつもりが、見事に裏切られていく人生の皮肉さが辛い…

あからさまに「最後の晩餐」をイジッたであろう、乞食によるまさに「怠惰の晩餐」と言える場面は、ただ胸糞悪いというより、まじまじと人間の業の深さを見せつけられる様な強烈なクライマックス!この場面で、ヘンデルのメサイア第2部最終曲ハレルヤを流す皮肉っぷりがまた凄い!正直観ている間、体が硬直して疲れましたわ(×_×;)

「人間なんて、所詮こんなもんでしょ。」と、中指を立てながらではなく、コーヒーでもすすりながらしれっと監督が言ってるかの様な終幕。単純な救済とは言えないそのシーンこそ、“人間”というものを「画と音」で示す、何より映画力を感じる場面でした。ここで流れる音楽がまたイカしてる反面、相当に意地が悪いです( ´-ω-)♪


この映画を観たら、仕事で初めて大きなチームを任された時の事を思い出しました。「とにかくポジティブに!」と何事も前向きにハリきっていたのですが、見事にすべては悪い方向に流れ…_| ̄|● まあ長い人生、そんな時もあります。希望を持つ事はもちろん悪いことではありません。しかし、人生そううまくばかりはいかないもんですよね(*´ー`*)
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