踊る猫

台北ストーリーの踊る猫のレビュー・感想・評価

台北ストーリー(1985年製作の映画)
3.8
途方もないノスタルジアを感じた。寂寞とした感覚、と言っても良いかもしれない。アジアの映画ならではの……例えばイ・チャンドンや黒沢清の映画にも通じるような要素を勝手に感じ取ってしまったのだった。人は何処まで自分の力で運命を切り開いて(難しい言い方をすれば「自由意志」に基づいて)生きていけるものなのだろう。運命やカネがこの映画に登場する男女を翻弄する。嬲り物にされながらも女は自分の才覚を発揮して生きていくのに対して男は過去に生き、リトルリーグ時代の栄光にすがり続ける。その果てにふたりにどんな結果が待ち受けているかを目撃した者は、この映画が一見すると村上春樹の風俗小説のような軽いタッチの作品であるように思われるが、実は極めて重い(だが、クソ真面目ではない)テーマを備えた映画であることを知るだろう。肩透かしを食らわせるようなロングショットでの惨劇の描写はやはりエドワード・ヤン的だなと思わせるが、小粒に纏まったままで終わったようにも思う。それとも、こちらの期待値が高過ぎただけの話なのか?
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