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ライフのymdのレビュー・感想・評価

ライフ(2017年製作の映画)
3.8
ジェイク・ギレンホールと真田広之が共演しているとあってずっと興味のあった本作。

本作にも主演級に配役されているライアン・レイノルズの『デッドプール』や傑作B級ホラーコメディ『ゾンビランド』も手掛けるレット・リース&ポール・ニーワックによる脚本というのも期待値を上げていたのだけど、その期待を裏切らない上質なSFホラーでした。

プロット自体はそれこそ古典的な名作である『エイリアン』に近いんだけど、乗組員たちの多様性と私生活の背景のリアリティとか、検疫を徹底する様子とかはかなり現代的に作られていて面白いし、宇宙空間の浮遊感の表現力も『ゼロ・グラビティ』とか『インターステラー』とかにも引けを取らないくらいよくできている。

正直大作を装ったB級映画なんじゃないかって密かに思ってもいたのだけれど、いい意味で「ちゃんとした」ジャンル映画になっていてとても好みだった。

地球外生命体”カルビン”の進化する過程の造形も気持ち悪くて素晴らしい。どうせならずっと初期型の無垢な感じのまま進化してほしかったってくらい、序盤の造形が最高だった。
クリオネが捕食する映像を昔テレビで観てゾッとした感覚を増長させる感じっていうのかな。

宇宙船という舞台特性上、密室ホラー的な緊迫感こそが重要なタイプの映画だけど、その点もしっかりクリアしていたのも良い。スター俳優勢ぞろいなのに忖度せずにテンポよくキッチリ死体を積み重ねていくので、次の一手に目が離せなくなる。

そんなスリルを断絶させることなくむしろ加速させてクライマックスへ着地させるグロテスクさも完璧。思わずウっと唸ってしまうほど見事な幕切れであった。

レット・リース&ポール・ニーワックコンビならではのゴア描写も、やや控えめながらも丁寧で見ごたえがある。
無重力空間だからこその凄惨さをキッチリ描いているという点ではSFホラーとして申し分ない。

こういうクローズド・サークル的な作品はどうしても展開に乏しくて既視感が強くなりがちなところを、巧みな演出とアングルで飽きさせないアイデアに満ちているし、何よりも2時間に満たない尺に収めることでちょうどいい、と思わせてくれるバランスの取り方もとても良かった。

強いメッセージ性や、語り継がれるような何かがあるわけではないけれど、エンタメに徹した姿勢は好き。テレビでやってたら途中からでもつい観ちゃうタイプの映画。
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