かつきよ

THE BATMAN-ザ・バットマンーのかつきよのレビュー・感想・評価

3.5

年末からみよう見ようと思ってたけど、3時間の覚悟ができず気づけば年明け2週間。
やっと見ましたけど、とにかくなっっっっがい!!魂が燃え尽きるかと思いました。

●社会派映画を見てるみたいだった

いまだにDCヒーローには造詣が浅い私。
まともに見たのはダークナイト三部作とジョーカーくらい。
個人的にはヒーローものとは思えない重さと暗さ、展開の強烈さもあって、ダークナイト三部作より好みのバットマンはないのでは?と思っていたし、今作を見終わった今でもそれは変わらないけど、なんというか、THE BATMAN、生々しすぎる。ちゃんとダークナイトとの棲み分けができていたので、それは純粋に評価が高いです。
ダークナイトシリーズは完全に大人向けのダークヒーローだなと思ったけど、今作を見て「あれでもエンタメだったんだ……」と思い知らされました。
今作はまるで社会派映画を見ているようなリアルな凄惨さ。バットマンも、謎かけをしてくるヴィランのリドラーも、コンセプトはいかにも漫画的なのに、作中での動きがどこかエンタメ的ではないというか……とにかく妙に生々しいんです。

単純な重さで言うと、個人的には物語的な演出からダークナイトのインパクトにに軍配が上がるけど、実際どっちの方が腐ってて冷徹で救いがないかと言うと、それは今作かなと思いました……。
ジョーカーがその点で最強に社会派的で救いのない生々しさがあったけど、よりあの雰囲気に寄せたバットマンという感じがします。
平成後期から令和初期のバットマンシリーズどんどん救いがなくなるけど……100年後とかに、「この時代のバットマン及びスピンオフは、とにかくヘヴィで生々しい演出が好まれ流行ってたんです」とか解説されてそう。

●史上最悪のゴッサムシティ

今作のゴッサムシティ、史上最低の腐敗都市なのでは……?(いや、比較できるほどそんなシリーズ見てないですが……)

犯罪者多発とか、世紀末感とか、そういう意味でなら他のゴッサムシティも腐ってたのかなぁと思いますけど、そう言うのってヒーローものにおいての前提条件というか、ヒーローエンタメとセットの設定として誇張されてるくらいで釣り合いが取れてるじゃないですか。
ただ、今作のゴッサムシティの腐敗の根深さ、生々しすぎて……いやいや、もうこの街守る意味ある???住民の皆さんなんでこの街住んでるの?他にもっといい街あるから移民しなよ、と言いたくなるレベル。他の都市では受け入れてもらえない傷モノだけが暮らせるスラムなのかな、と思っちゃいます。

最後はなんか絶妙な感じで終わりましたが、もうゴッサムに関わる公的組織の全てが私は信用できないです……
街ごと燃やすしかないのでは??と思っちゃいました

●ヒーローじゃなくてただの狂人

今作のバットマンこと、ウェインくん、作中で一度もヒーローとは言われてない……?気がします。
ダークナイトの時のバットマンは、めちゃくちゃダークだったけど、鋼のような信念とか、やはりヒーロー然としたかっこよさがあって、バットマン好きになっちゃった!って思える魅力があったのですが……。
今作のバットマン、ヒーロー感が殆どない。

作中で何度も周りから言われてるけど、ただの狂人笑😂
一応目的が犯罪者の捕獲と、目的が一致してるから警察から黙認されてるだけで、正義のヒーローというよりもただの変態狂人感がすごい。
一応人を殺さないという主義は他と同じくある……のかな。

のっけからI am Avengenceとか物騒なセリフ吐きながら登場したと思ったら、チンピラに絡まれる男性を助けるためとはいえ「暴力」としか表現できない戦闘シーン。助けられた男性もドン引きで逃げる。笑えるネタではなくガチ感。
その後のバトルシーンも、「バトルシーン」ではなくて、「暴力」を見せられてるような生々しい殴って黙らせる戦法が随所に感じられて、今作のバットマン、怖い😂笑

銃避けたりとかあんまりしないし、バンバン当たるけどスーツが全部弾いてくれる。え、そんなチートの怪物みたいな演出許されるの?と思いました。銃で撃たれながらも動じずに近づいていって暴力でねじ伏せる様なんかは、バットマンマンじゃなくてバイオレンスマン……。ヒーローの風格ではなくヴィランの風格。
そんな戦い方をしてたら、そのうち顔の下半分狙い撃たれて吹き飛ばされるぞ!と思うので下半分もマスクしてくださいよ

●ヴィランのリドラー

今回初めて知りました、リドラーさん。
ヴィラン実写化は2回目?前回はジムキャリーが演じたそうです。見たことないけど、愉快そう笑

今作は今までのリドラー像とは打って変わってのイメージだったらしいですが、なんというか、やはりここも生々しかったです。
というのも、今作の映画、意外にもスプラッタとか血の海とか、過激だったり鮮烈な残酷描写は無いんですけど、それでもリドラーはめちゃくちゃ猟奇的だなと思わせるような説得力がありました。インパクトはそこそこ

リドルということで、謎解きすることで事件の真相へと近づく刑事物的な一面があると前評判を見ていたけど、謎解きはアルフレドがしてくれるし、わりと暴力で解決してるし、刑事物感は少なめでした。

●総評

かなり長丁場で、ずっとリアル調で進むので本当に疲れました……
エンタメが好きな身からすると、3時間たっぷりの社会派の雰囲気はかなりお腹いっぱいで食傷気味に。
どっぷり浸かりたい方にはいいかもしれないけど、もっとわかりやすい盛り上がりとか、物語的な盛り上がりが欲しいし、テンポも良い映画の方が好きな個人としては絶妙な点数に。
アメコミ原作だけど、ガンガン重く社会派的な映画作りを求めてる人には大好物なのかなぁ、という感じでした。



以下、ネタバレ有りでつらつら感想




















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※以下ネタバレ有り















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◆ゴッサムシティ腐りすぎ問題
◆トーマスウェインは果たして正義だったのか?


結局市長も捜査本部長も検事もどっぷり汚職してたわけですよね
陰でゴッサムシティを取り仕切ってるのは、カーマイン・ファルコーネとかいうオチ。
ウェイン両親も実は腐ってた……という設定には度肝を抜かれましたが、アルフレドおじいちゃんの弁明により魔がさしただけでお父さんは正義の人だったと結論づけられてて安心した。
しかしながら、ファルコーネにお願いするという事がどんな結果をもたらすのか、という点を、政治的に危うい立場にいたトーマスウェインが熟慮しないわけもないと思うのだけどね。結局、程度はどうあれ裏社会とはっきりパイプを持ってしまった時点で、正義ではないんじゃないかな。それを自分でも気付いたからこそ、自白してぶちまけようと腹を括ったわけで……
ただこれも、自白は勝手にすればよかったのに、全部ぶちまけますってファルコーネに事前に知らせたのはもう「殺してください」って言ってるようなもんだよね。市長候補になるくらいトーマスは頭の切れる人だから、そこまで思い至らないはずがないと思うんだけどなぁ。
つまり、一度汚れた身は洗っても綺麗にはなれないから、自白して罪人として糾弾されるのが正義だけど、正義にもなりきれなくて、死んで終わらせるのも覚悟してたんじゃないかなぁ。結果それで自分の過ちは白日の元に晒されなかったわけだし、ウェインくんは腐敗した政治家の息子扱いを受けなかったわけだから、トーマスは自分を殺させることで家族を守りたかったんじゃないかなぁ。奥さんまで殺されるのは想定外だったのかも。

劇中ではファルコーネは死んだかもしれないけど、そこまで腐敗的な思想が深く根ざしてるゴッサムシティ、未来なく無いですか?
ゴードンはバットマンと共に汚職の関係ない正義代表、みたいに描写されてたけど、今作のゴッサムシティそっちの方が少数派だとしか思えない。
結局この腐蝕は食い止める事ができないと思うし、バットマンが頑張ったところで光なんて一つも見えない。三部作が一応決まってるらしいけど、この後どう続けるのか、着地する予定なのか、全く見えなくて恐ろしいですわ。

◆ポスター

気づかなかったけど、メインヴィジュアル、遠目に見ると「?」マークに見えるようになってる!センスありすぎかよ

◆キャットウーマン

ヒロインポジなのはわかったけど、弱すぎー
いや、個別のキャラとしてはそこそこ設定は詰め込まれていたけど……
なんでそんなに友達思いなのかいまいち見えてこなかったし、ファルコーネに対する殺意も重みがあまり感じられなかった。
でも、一番感じられなかったのはなんでバットマンの事好きになったのか……
名言はされてないけど、演者はそれらしいことを意識して演技してたらしい
キャットウーマン、せっかくキャラが立ってたのに最後は離脱するし、あまり強い必要性が見出せなくて、テンプレヒロインとテンプレライバルの折衷テンプレみたいなキャラ像の範囲でしか活躍してなくて残念でした

◆アルフレド

アルフレドの方がヒロイン力高かったよ!!!!
こんかいのアルフレドイケメンすぎる!!!!
誰!?って思ったらヴェノムLTBCの監督さんじゃないですか!!!!いいおじいちゃん!!!!

アルフレドとウェインの関係性エモっ

とか思ってたら、まさかのアルフレド爆発してびっくり。死んだかと思ってたけど生きててよかった😭元気になって

目を覚ましたアルフレドに心配したり優しくするどころか、嘘をついてたな!なぜ父かクズだって隠してたんだ!!と非難するウェインクズすぎて許せん。老人は大切にしろ、親代わりのアルフレドのこともっと信頼しろ、事情や気持ちを察しろなんだお前は!!!

◆ゴードン

バディとしてテンプレ感は否めないですが、まあそれでもやっぱりコンビは良かった!
支え合って生きて欲しい

◆リドラー

調べたんですが、本名、ニグマじゃなくなってましたね。
ポールダノの迫力よ
めちゃくちゃサイコパスの思想犯っぽい顔で、ハマり役すぎて怖かったです。
感じに対するなぞなぞとかキレててよかった

ただ、途中までは底知れない怖さがあったけど、最後の方は尻すぼみ感が否めない
具体的にいうと捕まってからかなぁ
爆発で堤防決壊させたところまでは、街をめちゃくちゃにする感じがして、ゴッサムシティという腐敗した都市を滅ぼす事で浄化しようとしてるのは聖書っぽくてかっこいいし分かるのですが……

なんで新しい市長候補殺す事がゴールだったんだろう?新しい人いい人そうだしさ
殺す必要なくない?
しかもそれを自分じゃなくて、武装させた素人集団に任せるとか
素人だとしてもあれだけ用意してて市長殺害失敗するのも相当おかしいし脚本的に無理ない?
個人的には自分だけが知ってた腐敗を全て晒せて、腐った関係者を全て殺す事ができて、街まで洪水でめちゃくちゃにできて、思想犯としては完全勝利なんじゃないか?と思いましたが、最後すごーく悔しがってましたよね
あれ、なんで?君勝ったよ充分に
って感じでした。
結局狙いはバットマンだったていうのも、わかるんですが、それにしてはそれまでの復讐劇がメインと言えるほど壮大だから……
最後の最後で自分は塀の中で、洪水を起こして新市長を仲間に殺させるっていう筋書きしか用意できな勝ったのが謎。お前さっきまでもっと頭よかったのにフィナーレの計画杜撰かよ!なんでそれでバットマンが苦しむと思ったんだよ!!!!という。


なんか最後にかけてカタルシスのない犯人像だったなぁ

◆ラストも

バットマンが人助けて終わり
お前狂人やろがい!
お前の信念はなんだ!
なんか色々見えてこない映画だったなぁ

◆最後バットマンがキャットウーマン助けるために自分に打ってた薬について

https://cinema-tronix.com/what-does-the-batman-inject-himself-with/

↑調べたらこんな記事が出てきました
元ネタわからないとわからないやつですね
知ってる人は、これかなー?ってネタ拾えるやつ

【参考】

● https://eiga-watch.com/the-batman/

あらすじ振り返りはここのサイトが簡潔でわかりやすいです

● https://sykmovie.com/post-812#toc2

バットマン原作ネタを踏まえた伏線要素を解説してくれているサイト
めちゃくちゃわかりやすいですし、映画のラストの仕掛けについても解説してくれていますので、鑑賞後一読してみるのがかなりおすすめです
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