mimitakoyaki

わたしたちのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

わたしたち(2016年製作の映画)
4.3
またまた素晴らしい韓国映画と出会えました!
韓国映画といえばアクションやバイオレンスなんかも面白くて質の高い作品がたくさんありますが、本作は、そんなド派手な展開もないし御涙頂戴でもなく、だけど子どもの世界と心の奥底や揺れに迫り、じっくりと丁寧に描いたとても良質な作品でした。

小学4年生の女の子ソンが、クラスでドッジボールをする冒頭のシーンから、彼女の顔がクローズアップで映され、周りのクラスメイトやドッジボールをしてる様子は映らないのに、そのわずかなシーンでソンがクラスの中でどういう存在なのか分かるし、彼女の表情の繊細な変化で感情が痛いほど伝わって来ます。
それだけで、ああ、この作品好きだわと確信できました。

夏休み前の終業式の日に転校して来たジアと出会い、すぐに仲良くなってからの2人がほんとに楽しそうで幸せそうで、今まで学校でも仲間はずれにされて居場所もなく寂しかったソンが、ようやく友達ができ笑顔になれたり、ジアさえそばにいてくれたらそれだけで生きていけそうなくらい、きのうまでと全く世界が変わった感じを見てると、そのままの自分を受け入れてくれる存在がどれだけ大切かを思いました。

子どもの時って、家がもちろん居場所なんだけど、学校が世界の全てみたいなところがあって、そこでつまずいてしまったら、人生が終わるような感覚になってしまったりするんですよね。

子どもは学校でのヒエラルキーの上位を保つために、誰かを標的にしていじめて、自分の立場を強めていこうとする。
時にはいじめる対象が些細なきっかけで突然変わることもあるのは、自分の子ども時代を思い出してみても全くその通りで、常に誰かを無視したり意地悪する子がいたものでした。

特に女の子って、なぜかしらグループを作る習性があって、わたしなんかは休み時間に行きたくもないトイレに付き合うのもイヤだったし、いつも同じ子と弁当食べたり帰ったりしないといけない感じとか、くだらねえ!と思うタイプだったので、そういう女子独特のつるむ感じや陰湿さが嫌いだったしメンドクサイしで男子がちょっとうらやましく思ったものです。

だけど、この映画を見ながら、クラスのいじめっ子のボラもジアも、心に痛みを抱えてて、寂しかったり不安だったりしてる。
その弱さを誰にも見せたくなくて必死で虚勢を張って自分を強く見せようとしてるのかなと思って、十分にこの子達も傷ついてるのがかわいそうでした。

学校ではいじめられて寂しいソンも、家に帰ると甘えられるお母さんがいて、働きづめで忙しいし家計も厳しくて苦労しながらも、子どもに向き合って愛情を注いでくれるから、家が貧しいのは辛いけどまだ救いがあるんですね。
だけどジアの方は、家が裕福でも親に愛されてないから心の拠り所がなくて、きっといつも不安なんだと思います。
ソンとジアが対象的に描かれていて、考えさせられました。

マニキュアの色や顔の傷の絆創膏も印象的でした。
友情の証だったホウセンカ色の爪に水色のマニキュアで上塗りしたり、友達関係や心の変化が爪の色で表現されていたし、ヤンチャ坊主の弟の顔の傷とソンの顔の傷は、同じ傷でも全然質が違ってて、そこからソンが変わっていくというような表現がとても良かったです。

きっと、誰もが自分の子ども時代に経験したり見たりしてた事を思い出すんじゃないでしょうか。
韓国の小学校の教室や授業風景、ドッジボールしてるところなど、日本の小学校とそっくりで近く感じますが、それだけでなく、子どもが小さい時から塾に通って成績で競争させられるところや貧富の格差など、社会が抱える問題も共通していてるのを感じました。
いじめの問題はどこの国にもあるのでしょうけど、学歴・競争社会、格差社会では子どもも大人もストレスフルだから、スクールカーストみたいなのがより出来やすいのかしら?とも思いました。

劇的ではないけれど、子ども達の心の揺れにぐっと近づき、それでいてそっと寄り添ってくれるような優しさがあって、とても良かったです。

116
mimitakoyaki

mimitakoyaki