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ゲット・アウトのkoyamaxのレビュー・感想・評価

ゲット・アウト(2017年製作の映画)
3.5
前から気になってた作品ですが、敢えてあらすじも見ないままに鑑賞。
出発点はコメディということですが。。

以下、すこしネタバレもあります。








鑑賞側の立ち位置は、一般レベルで知識として知っているものの、マルコムxやマーティンルーサーキングの叫びを真の意味で理解できているのかわからない日本人です。

歩いているとモンゴロイドというだけで逮捕される可能性がある。
モンゴロイドというだけで銃で撃たれてる可能性がある。日本においてその可能性は(少なくとも)現在のところないですからね。

いままでも黒人が冷遇される映画はありましたし、黒人の誇りをとりもどす物語も数多あります。
そのメンタリティなどは音楽や、ドキュメンタリーなど様々な形で共感もしてきました。



幸か不幸か、日本にいます。
スクールカーストであったり
社員とバイトの扱いだったり
色んな種類での差別は身近にはあるとおもいます。表層化してるもの、してないもの、もっと根深い色んな差別問題もちろんありますが。ここでの言及は避けます。
ただ黒人と白人との軋轢は外国での出来事という認識の方が個人的には強いです。



ゲットアウトです。



閉ざされた街にやってきたら
ヤバイ変態たちに襲われた系の話です。


まず、白人が黒人の身体的優位性をみとめる上、羨望の視点からさらにそれを乗っ取るという物語は今まで存在しないモチーフで斬新でした。(単に自分が知らないだけならすいません)

恐怖感を描くのがホラーだとしたら
死に対する恐怖、これに勝るものはないとおもいます。

本作はそれに加え、
潜在意識として差別に対する恐怖と
体をのっとられる恐怖。
そしてなにより乗っ取られた後も意識がなんとなく残るというのが気味が悪く出口のない絶望感を感じます。

自分の土地やアイデンティティを奪われながらも意識は残るということの屈辱感、
精神を蹂躙されながら出口のない絶望感の中で日々を過ごす恐怖たるや。
今回の作品は、死の恐怖より、生きながらにして服従させられる意識。
この薄気味悪さにつきました。
人種差別により隷属する側の立場や植民地化される側のメタファーにもなりうるし、現実的な気味の悪さを感じるので、鑑賞後もあとをひく感じがありました。


耳栓はどうやってつけたのか、
手術の際、2人揃えてからはじめるべきなど細かいところで気になることはいくつかありますが作品の独自性が際立って展開するので、これはいいでしょう。

むしろ、これをコメディとしていたら?
どうなっていたのか気になりました。
笑えるのなら色んな意味ですごいことのような気がします。
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