米国特有の人種関係ネタをサイコホラーフォーマットに落とし込んだ意欲作。ネオナチや KKK のような分かりやすい差別主義者でなく、「自分たちは差別などしない」と信じている白人層の「無意識レベルの人種的線引き」（黒人に向かってあえて「私はタイガーファンでオバマ支持」を言ってしまうような）、制度的人種差別の原因だったり結果だったりするアレ、を極端にカリカチュライズして可視化。スタンドアップコメディの定番ネタだが、それに正面から取り組んだ初のメジャー映画ではないか。正直、ホラー映画としては無理やり感もあってそこそこ、おまけに本来は黒人と連帯しうる層の白人を敵視もしてしまっている。ともかく、メッセージ内容のタイムリー性と重要さ、それをエンタメ映画フォーマットに落としこむという離れ業、その結果としての米国社会への影響力、さらにその影響力までを計算に入れて制作したしたたかさ、といったメタ要素が論じられ評価される作品で、私にもそこが興味深い。今世紀これまで、映画の持つメッセージ発信力を、最も有効に使った事例だと思う
