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スティル・ナハト 寸劇のkuuのレビュー・感想・評価

スティル・ナハト 寸劇(1988年製作の映画)
4.3
『スティル・ナハト‐寸劇』
原題:Stille Nacht I: Dramolet
初公開1988年。上映時間1分46秒。
人形寸劇短編映画。

この作品は1956年のクリスマスの夜に亡くなった作家ローベルト・ヴァルザーの小説『Jakob von Gunten 』(1909)影響され、彼へのオマージュとされている。
因みに、有名なクリスマス・キャロルのひとつ『きよしこの夜』は
ドイツ語でStille Nachtと今作品の原題。

この作品は、明確に脚色がなされてへん。
作中の制度化された一連の動きの中に、一見矛盾した概念の独創性に、みてるものを孤独で肌寒い印象を持たせて、それが心に広がっていく。
アニメーション化された砂鉄を使うことでより冷たく尖った印象を強化していると思う。
これってのは、全ての表面に急速に霜が形成されることで、個々の砂鉄の粒子の揺れさせ、
鋭く鋭い風に模してるのかな。
人形は窓の外の『霜』を見て、同じ物質で満たされたボウルに変わる。
人形のスプーンは振動し始め、
まるで同情したかのように、後ろの壁からさらに多くのスプーンが現れる。
サイレントムービースタイルのアイリスアウト(画面の端っこから円形に映像が暗くなっていって、最後に真っ暗になるようなトランジション)を介して黒にフェードアウトすると、テーブルの表面に『霜』が形成され始める。
アニメーション自体は崇高な印象をもった。
この作品のスゴいなって感じるんは使ってる主な道具にほぼ
『ひび割れた大きな目の人形』
『金属のスプーン』
『砂鉄』
によって演じられているとこかなぁ。
物質がまるで生命に恵まれ、また、霜のように動く。
人形と砂鉄やスプーンのような金属って生命のない物体が相互作用するこのモノクローム。
沈黙の時代のカメラ技術を彷彿させる。 
高レベルのシュールレアリズムやとおもったかな。
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