かつきよ

夜は短し歩けよ乙女のかつきよのレビュー・感想・評価

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)
3.6
そこそこ面白かったです!

四畳半タイムマシンブルースを見て、森見登美彦欲が高まったので鑑賞。
なんとなく見たいなぁと思って機会を逃していた1作。

結論から言うと、面白かったけど、四畳半とか有頂天家族の方が好きだったかなぁという感じ。

世界観的には、四畳半神話体系と共通。
冴えないメガネの京都の苦学生男子(本名不明)が、可憐な部活の後輩の少女(本名不明)に片想いする構成は四畳半と共通しているし、樋口先輩や羽貫さんが友情出演どころか、メインキャラとしてがっつりと登場。

メイン主人公は「私」ですが、語り部の視点がずっと続くわけではなく、ヒロインに当たる「黒髪の乙女」の方が主人公然とした活躍と快活さを見せてくれ、メインで展開するシーンがそこそこありました。

◆ストーリー

酒豪の「黒髪の乙女」が、先斗町の飲み屋を歩き回り、納涼古本市に馳さ参じ、学園祭や病床の町を闊歩する中で縁を結んでいき、また縁に導かれて行くストーリーは軽快さがあり見てて楽しかったです。全てが一夜の出来事とされるのは無理があるだろ!という質量ですか、まるで夢を見ているような幻想的な雰囲気があって、そんなところも好き。

その裏で「私」が常に「黒髪の乙女」を陰で追い続ける「私」視点のストーリーの方は見ていて少々のむず痒さを感じました。
ラストにかけての展開も、黒髪の
乙女側のストーリーはかなりしっくりきて面白さを感じたものの、先輩が関わってくるあたりからは勢いで押し切られている感じがしてなんだか腑に落ちなかったです。

ラブストーリーとしては微妙。だけど、森見ワールドとしてはやはり独特の雰囲気や展開の思い切りの良さはこの作品にしかないものがあって、楽しめました!
全ての話に「縁」というものを意識させられるような要素が盛り込まれていて、強調されているのが、面白い。

◆キャラクター

・先輩

星野源さんのキャスティング、合っていたといえば合っていました。しかし、浅沼晋太郎さんの演技になれていると、やはり流暢さとスピード感に欠けるように感じてしまう独特の語りに、違和感は拭えず。改めて浅沼慎太郎さんの流動体のような語りの素晴らしさを実感しました。
完全に星野源さんは悪く無いのですが、キャラ像が近しいのでどうしても比較される浅沼版が規格外すぎる感じです。

ただ、キャラ像も、四畳半の私と比較してしまうと若干拗らせ具合に思い切りがなく、カッコ悪いシーンが少々続くので、あまり好きにはなれませんでした。
主人公としては黒髪の乙女のほうが魅力的すぎ

・黒髪の乙女

鑑賞前は純情可憐な少女かと思えば、天然さをのぞかせる快活な性格で、素直で破天荒で勢いがあり、四畳半の明石さんとはまた違う魅力の詰まった不思議なキャラクタ像に引き込まれました。
好き!

・学園祭事務局長

神谷〜!笑

・古本市の神様

原作だと眉目秀麗な美少年らしい。
なぜ小津になった
神様というか悪魔っぽい

・パンツ総番長

この歌も歌えて語りも上手な声優誰だろうと思ったらまさかのロバート秋山!!めちゃくちゃ違和感ない良いキャスティング!!
嫌いじゃないけど、願掛けのためにパンツを履き替えない……せいで下半身に病気すらも患っている設定は単純に汚すぎて気持ち悪い笑
その設定さえなければもっと好きなのに

・李白さん

神様とか仙人っぽい謎の多いキャラクター
でも、独特の魅力があって好き
若い男のパンツを剥奪するのは何故???笑


◆以下はネタバレ有りで感想を綴ります












以下ネタバレ有り感想!


















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※ネタバレ有り





◆飲み屋街編

乙女が樋口先輩と羽貫さんと出会い、ご縁に導かれて渡り歩く店々を愉快爽快にして行く感じ、そこそこ好き。
でも一番好きなのはvs李白のあたり!
幻の偽電気ブランに行き付き、李白と全てを賭けた飲み勝負をする乙女……
絶対的に強キャラの、人間離れした雰囲気の李白さんが潰れてもまだまだ余裕で酒を飲み続けられる乙女、最強を通り越して唯一神笑
しかも散々飲み屋を巡り歩いた後で😂

電気ブランに対する2人の感想やスタンス、李白さんは人生を悲観していて、老生の孤独、諦観のようなものを感じるのに対し、溌剌とした乙女は楽観的で希望や期待、花のような若々しさやエネルギーを感じるのが印象的。
実際にこの後のストーリーでも、この快活さや楽観が常に彼女を楽しませ、彼女といろんな人物たちの縁を繋いでゆくので、見習いたいなと思いました、

◆納涼古本市編

神様、やってる事も顔もどう見ても悪魔。
小さい無邪気な存在に迷惑がかけられる系の話が苦手なので、酷い目に遭う先輩が見てられなくて若干苦手。
本と本との見えないつながりを無限に説明するシーンは好き。
本だけじゃなくて、映画とかテレビとか、そして人物なんかも、こうやって見えないところでどこか繋がっていて、それが互いに影響しあって存在している。そんな「縁」を感じて、面白いなあと思います。

闇鍋大会でまさかの樋口先輩を下してラタタタムを手に入れる主人公は、正直すごい!

◆学園祭編

パンツ総番長本格始動
ゲリラ演劇にて初恋の相手を探すラブストーリー

頭で同時にリンゴが跳ねて恋に落ちたとううなんともロマンティックな恋
相手が女装した学園祭事務局長なのは、序盤のキャラ紹介シーンからなんとなく察していたけど、軽快に歌って踊るミュージカルシーンは作中でもなかなか好き。

学園祭事務局長が女装して登壇した時、お前も歌うんかーい、と盛り上がりました。
撃沈するパンツかわいそうだけど、紀子くんが「私じゃダメですか?」と歌い始めた時はちょっと感動……!!
いや、紀子くん、近くで見続けてきたからこそ、そんな不潔な男でいいのか!?笑

そして、男でもリンゴが跳ねた事務局長の方がいい……というのは、ロマンチスト通り過ぎてバカ
本当にこのまま死ぬまで事務局長が好きなんだったら、一途で素敵!と思うかもしれないけど、その後頭で鯉が同時に跳ねて紀子くんに即乗り換えしてるし
頭で何かが跳ねたらいいんかーい!!!!笑

事務局長も事務局長で、パンツでもいいかも、なんて、そうはならんやろー!!!!!!!笑

紀子くんは、好きな人と付き合えてよかったね

◆病床の町編

樋口先輩まで罹る風邪にかからない乙女最強説。最後乙女もかかるのかと思ったら、かからないし!!
みんなのお見舞いに練り歩くシーンはなんだか暖かくて好き。

病の原因である李白亭
孤独をこじらせた李白の独白と、老人の孤独がダイレクトに伝わるシーンは染み入るものがある。
それでも、人は「縁」によって繋がっていて、この風邪ですらその「縁」の証拠だと豪語する少女の激励……
かなりグッとくるし、乙女本当に好きだなあと思えるシーン。
乙女に励まされて萎れてた李白氏が元気になって行くシーンがすごく好き!!
面白さのピーク!

◆先輩の元へ編

しかしそこからが、、、
孤独に病床に伏せる大学生男子のこじらせの独白が退屈
ジョニーが出てきてるのは性欲のこじらせのメタファーでもあるのかな
乙女が看病してくれる展開は心地いいけど、なぜ乙女が先輩を気にかけてくれるほど意識してくれるのかはちょっとばかし説得力に欠ける。
ナカメ作戦が功を奏したという事なのか……。
接触回数はそこそこあったけど、結局は見てる自分自身が「私」を好きなならなかったから、最後の展開も納得できなかったのかなと思います。

【参考】

https://holla-front.com/night-walk/

原作のあらすじ結末のまとめ。
考察や見どころ、元ネタなどもちょこちょこ。
映画版との比較がしやすいです。
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