にくそん

許された子どもたちのにくそんのレビュー・感想・評価

許された子どもたち(2019年製作の映画)
4.1
まったく“逃がしてくれない”んだな、と思った。わずか13歳にして同級生を殺してしまった少年に、被害者遺族の憎しみと世間の非難(というか非難に乗じたバッシング遊び)と、何より自分自身の罪悪感が、どこまでもつきまとう。だから主人公の絆星(キラ)は逃げられない。それは分かってたんだけど、私たちも映画にちっとも逃がしてもらえないのにはまいった。

見るのが辛いようなシーンで、ここはもうカットで次の場面に行ってくれてもいいよとか、俯瞰ショットに切り替わってくれてもいいのにとか、何回か思ったけど、この映画はそんなふうに見やすくはなってない。樹が死ぬシーンの描写なんか、容赦なし。人が死ぬって簡単なことじゃないんだと突きつけてくるような厳しい描き方だった。

そのせいもあって、映画を観ながらずっと「どうしたらいいんだろう」「どこから間違えたんだろう」と当事者のように苦しんだ。息づまるというか行きづまるというか、とてもしんどく、しんどくも濃い映画体験だった。

いじめについての話し合いのシーンで、何人もの生徒が「いじめられる側も悪い」「いじめられる方に原因がある」と言っていて、胃が重たくなる。“いじめたくなるってことはそれだけみんなが不快だと思ったんだから”という考え方。正義は(っていうか正義をまじめに求める気持ちが不在だったりして、その場その場の正解は)多数決で決まる。たとえ、多数決に参加するメンツがバカ、未熟、バカ、迎合、ノリ、バカ、保身、バカで構成されていてもそうなる。

暴力描写以上にしんどいなと思って観ていたら、隣(1つ座席を空けて隣)から「ふーっ」と大きなため息が聞こえてきた。胃の重いのがちょっと楽になった。映画館で映画を観る良さっていろいろあるもんだなあと思う。他の客は、確かにジャマになるときもあるけど、別に敵じゃないんだし。

絆星を演じた上村侑さん、初めて見たけど、ずっと見ていたくなるような目をしていた。他の人に喩えるの間違いかもしれないけど、『誰も知らない』のときの柳楽優弥みたいな。役者を続けてくれて、映画でまた見られたらうれしい。
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