にくそん

おろかもののにくそんのレビュー・感想・評価

おろかもの(2019年製作の映画)
3.8
結婚間近の兄が浮気しているのを突き止めて、なぜかその相手に会いにまで行ってしまう妹の話。妹、浮気相手、婚約者、兄の群像劇なんだけど、どの人物も矛盾をたっぷりはらんで人間くさくて面白かった。誰かの実話を人から聞いているみたいな、生々しい感じ。でも、とぼけた感じもあるし、えぐいようでもファンタジーみたいなかわいい着地をするし。

妹の友達が台湾出身で変な日本語使いで漫画好きで百合好きだったりとか、妹が人の仕草からその人の性格や感情を見抜くのに長けていたりとか、ちょっと変わった設定が入ってくるのも楽しかった。

婚約者・果歩役の猫目はちさんのお芝居に、なんだか引きつけられる。ちょっと棒読みみたいなローテンションなんだけど、こういうしゃべり方の女性っているいる。下手をしたら「ああいう女が本当は一番怖いのよ」的に言われそうな役どころなんだけど、そういうネガティブな見方を許さない、女をおとしめない演じ方をしてくれていたと思う。それにしてもクセになるセリフ回し。見たの金曜で今が月曜だけど、思い出したらまだ頭の中に「え、すごいね」とか「そっかー」とか聞こえてくる。

村田唯さんが演じた美沙は、この人ちょっと色気がありすぎて、会社で事務なんか執れるようには全然見えないところが、なんかせつなかった。健治と果歩が近所の公園の池でデートしているのを見て、洋子が「もっといいとこ行けばいいのに」と言って、美沙が「こういうのがいいんだよ」とつぶやくシーンも。きっと、この人にはものすごく手に入りにくいものだ。相手が健治でなくても。

上映期間に見逃して残念だった映画を、劇場で観られてラッキーだった。しかも舞台挨拶付きで、司会は主演の笠松七海さん。花屋のシーンやラブホのシーンの裏側とかが聞けたのも楽しかったし、出演した人がこの映画を変わらず好きで上映会にこうやって駆けつけてくれるっていうところにすごくほっこりした。
にくそん

にくそん