カツマ

夜明け告げるルーのうたのカツマのレビュー・感想・評価

夜明け告げるルーのうた(2017年製作の映画)
3.4
歌うたいのバラッドの歌詞には人を前に進ませるだけの力がある。その力をアニメーションという姿に変えて解き放つ、どこか懐かしい青春の1ページ。人間の業も、異質なものへの差別も、蔑ろにはできないほどドス黒くて、大人に近づけば近づくほど自分のことを嫌いになっていく。でも誰かの言葉が、いつか見た風景が、心の奥深くに染み込んで、やっとその真っ黒な宇宙から日の明かりへと手を伸ばすことができる。この映画を見ていて、成長ってそういうものなのかな、とふと思った。
モンドリアンのような角形、クレーのような色彩。湯浅政明の個性的な構図と彩りも見どころですね。

中学3年生のカイは東京から日無町に越してきたが、いつもどこかうわの空。だが、趣味の音楽を動画でアップしたところ、クラスメートからバンドを組もうと声をかけられる。そのバンドの名はセイレーン。日無町は昔から人魚の伝説の眠る町で、その人魚から取られたバンド名だった。カイはバンドへの参加には懐疑的だったが、ある出来事を境に興味を示し出す。
そう、彼の前に小さくてまだ子供のような人魚が現れたのだ。彼女はルーと名乗って、カイが音楽を鳴らすと海の中からヒョイと顔を出す。カイはルーを呼び寄せるため、バンドメンバー2人と共に人魚が住むと言われる島へと渡ることになる。

本当にこれでいいの?というラストではあるのだけど、これは人間側の物語であり、ある少年たちの成長物語なので、これでいいのかなと思うことにした。音楽と青春とアニメの相性の良さは抜群で、メロデイとダンスに乗せて、キャラクターと一緒に踊りだしたくなる、音楽の肉体的快楽を映画という形で再現してくれた作品。
ジブリ作品と似ているけれど、こちらの方がより人間目線の話なので、やっぱりそこは決定的に異質なのかなと思いました。
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