小松屋たから

さらば愛しきアウトローの小松屋たからのレビュー・感想・評価

さらば愛しきアウトロー(2018年製作の映画)
3.8
ロバート・レッドフォードは映画界のまさに偉人。役者としてはもちろん、監督としても結果を残し、創設した「サンダンス映画祭」では、今も次々と新しい才能が生み出されている。

そして最後に選んだ役が、希代の犯罪者。さすが、というべきか。人間、誰しも悪行への憧れを内に秘めているが、普通は表には出せない。でも放っておくといつか爆発するかもしれない。だから演技として人間の欲望や本能を見せて、人々の心中の悪意を消化するのが役者という仕事の最も大切な役割のひとつなのだ、ということを身をもって示して去っていくのだ。

イーストウッドの「運び屋」と同じく高齢犯罪者モノということになるが、こちらは、時代設定も古いし、演出はやや現代的ながら、画質や音楽、題字などはその時代の映画のテイストにあわせてきているので、70~80年代のハリウッド映画を観た感覚になれた。イーストウッドが演じる犯罪者よりも気品があり、聖人感があるように見えるのは、役者、人間としての個性はもちろんだが、自分の人生を自身がどれくらい肯定的に捉えているかどうかの差が出ているのではないか。

原題はせっかく世界的文学作品「老人と海」に倣ったタイトル(THE OLD MAN & THE GUN)なのだから、邦題もそれを尊重した方が良かったのに、とは思ったが、これは配給会社の人が、ロバート・レッドフォードの俳優引退作と聞いて、色々な思いが溢れ出して気持ちが抑えられず、どうしてもこんなタイトルにしたくなったのだろう、と好意的に解釈しておきたい。それともルパン好き?