馬井太郎

羅生門の馬井太郎のレビュー・感想・評価

羅生門(1950年製作の映画)
4.0
うっそうと生い茂る森の木々、見え隠れする眩しい陽の光、それを遮る枝葉、誰の目にも明らかな部分と、灰色と暗黒の見えない混沌の部分とが入り混じる空間、これが、まさしく「藪の中」であろう。
黒澤は、この映像にこだわった。
太陽にカメラを向けられないのを、どう撮るか。
絶対的な信頼をうけるカメラの宮川一夫は、黒澤のこの期待に見事に答えた。
普通、現像では銀が除かれてしまうが、あえてその銀を残す技を考え出した。これが「銀残し」という手法である。コントラストが強く、画像に渋みが出る。ぃぶし銀とは、まさしくこのことだ。
映画では、監督がいちばん偉い、次がカメラで、時と場合によっては、
監督をしのぐ発言力がある。
宮川一夫は、おびただしい数の撮影をこなしてきた。カメラでは日本映画史上最高の人であろう。
黒澤+宮川羅生門だったからこそ、世界を驚かすことが出来た、と私は思う。