むらみさ

バトル・オブ・ザ・セクシーズのむらみさのレビュー・感想・評価

4.5
とくに意識して選んだ訳ではなくとも、最今の映画では本作のようなジェンダーフリーをテーマにしたものによく出逢う。
脚本が巧いのか演出が抜きんでているのか監督が良いのか調べたいと思うが、本作はジェンダーの持つ曖昧さやうつろいやすさを本当に上手く表現している。
しかもプロスポーツプレーヤーの孤独や重圧も表現しながら。


ビリー・ジーンがバトルに挑んだのは、決してウーマンリブの先導者として女性有利に立ちたい訳ではないという不確かさ。
ボビーが勝利したいのは、生まれついての賭博師だから。
そこの丁寧な描きわけが、ラストに繋がってくる。
エマ・ストーンの持つしなやかなタフさとスティーブ・カレルのシリアスとコメディの中間をいく表現者ぶりがめちゃめちゃ活きていて、キャスティングでもう成功していた事がわかる。

男であるか女であるか、二極化して相対性を持たせれば双方の不満のガス抜き程度にはなるけれど、真の意味での問題解決にはならない。
自分のままで生きていくことは本当にどの時代も難しかったんだな…。
ビリーや彼女が愛したふたりに気持ちを重ねていった時、自分が心から求めていた・と思っていたものの曖昧さが浮く感覚にとらわれて、ジェンダーに対する思い込みを意識した。


アラン・カミング。大好きな俳優さんなのだけど、彼が試合後ビリーに伝えた言葉がすべて。
それを感じた時に、男だとか女だとかを越えていく瞬間があるので、ジェンダーを小難しいテーマと考えるひとにもぜひ、見て欲しい。
むらみさ

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