むらみさ

ベスト・オブ・エネミーズ ~価値ある闘い~のむらみさのレビュー・感想・評価

4.0
BLACK✕WHITE
問題が2極化で対立式でしか語れない歴史が絡む映画は、観るのにそれなりに体力が必要で全身にちからが入って楽しむどころではないのだが。。

主演がタラジPヘンソンとサムロックウェルのふたりなら観たかったし、やはり良作でした!

対立したふたつの理念の話になりがちな人種問題も、議題に掲げて席についてみると
リベラル派、博愛主義者やベトナム戦争経験者など様々な価値観から人権を考えるひとが集い、みな他者のために集まり話し出す。
そんな民主主義の理想を具現化した、素晴らしい映画だったのですが…

本当にこれ実話なの…?!


個人の権利が(ある程度は)守られる法の秩序が敷かれた土地でしか話し合いの【シャレット】は成り立たないだろうけれど、それを生業としたまとめ役アンクル・トムことビル(バボー・シーセイ)の存在にまず驚いた。
差別意識の相対的には緩やかだった米北部ではシャレットで解決できた案件があってこその、差別が根強い米南部での改革は現実に少しずつでもあったのだろうか。

今までいろいろな人種問題の映画を見てきたけれども、こんな史実があったなんて。


日常的にマイノリティが虐げられている環境に誰も目をとめなければ、マジョリティにだけ住みやすく快適な毎日が約束される。
そこにどれだけひとの感心を引き寄せ、好奇心・責任感・自己実現欲求などを巻き込んで物ごとを達成まで持っていくか。
ひとの“良心”は信ずるに値するものなのか。

信じる心というものが信仰から自然に学べるものならば、おなじ聖書からの信仰をもつ人間としての黒人も白人も他人種も、最期まで信じきることができるかもしれないのか?

ビルの仕事人としての信念はどこにあるのか。
それがいちばん気になる…!
そんな映画でした。

アン(タラジPヘンソン)はKKKの展示を護った場面に、
CP(サムロックウェル)はKKK最優秀支部長に選ばれた場面にそれぞれ素晴らしい演じかたをされていて。
顔の見えない誰かを憎んで勇猛に生きてきたふたりが不条理にさらされる他者に向き合った時、怒りが剥がれ、振り上げた拳をぶつける場所はなくなり、じぶんの弱さと向き合わざるを得なくなる。

KKKやブラックパワーを、
孤独なじぶんの居場所を確保するための手段だと描いた映画は初めて見たし、
じぶんが闘ってきたと思っていたものの違和感に対峙する気もちの揺らぎを主演のふたりが本当に素晴らしく演じられていたので。

キャスト選出が既に良作を約束していた、そんな映画でした!!
むらみさ

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