このレビューはネタバレを含みます
死はそこいらじゅうにあるなぁ…
『のどぼとけがこんなに綺麗に遺っているのは本当に珍しいことですよ』と、生前の父を知らないやまだくん(松山ケンイチ)が聞かされるのは、当人にとって何にも替えがたい救いだよなぁと思って観ていました。
故人のおくりかたは現代において、お金をかける方法もあるし質素堅実に見送る方法もあるけど、縁者の弔いかたを選ぶとき、なんだかその亡くなったひとの生き様そのものをジャッジしてしまうような、
そこで価値を決めてしまうような、翻って己の生活基準をジャッジされて格付けされてしまうような無力感に襲われてしまう感覚はとてもわかります。
生きものにとって『死』は1度きり。それは平等なものなのに、弔いかたひとつで遺った生者のその後の生きる時間の価値が決まってしまうと思い込みがちなのは、資本主義の弊害??
いえいえ、それだけ日本は本来もっていたはずの生も死も同いつ的な考えかたから遠くにきてしまったんだろうなぁ と思いました。
他人との間に一線をひきじぶんの時間だけを充実させようとし過ぎていて、
生きてるあいだ中の面倒くさいことを愛おしむとか引き受けるとか、そういう大人も少ないし、何よりやっぱり何かを育てる時間が身のまわりにないので、思い通りにならない体験が少ないのかなぁ。
そんなことをつらつら考えながら、泣きながら観ていました。
生きているあいだにたくさん『死』に触れてみると、失うことの怖さとか、忘れられてしまうことへの怖さがだんだん薄れて、もっと他者を赦せるようになるのかなぁという観賞感でした。