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羊と鋼の森のshihoのレビュー・感想・評価

羊と鋼の森(2018年製作の映画)
3.6
『正しい音は美しい』

多少音楽をやったことがある人なら、発する「音」が正しくないとそもそも他と合わせることはおろか「音楽」にはならない事は分かるだろう。

電子で動く楽器はともかく、ほとんどの楽器は弾く前に「チューニング」という音合わせが必須である。

その中でもピアノは特別な存在で、沢山の部品からなるこの楽器は専門の調律師が必要になる。
そんな調律師になった男の子のストーリー。

まずタイトルの意味。
なんぞやと思ってたら簡単で、
鍵盤を押すと、「羊」の毛で出来たフェルトが「鋼」を叩いて音が出る。
主人公は森の中で育ったのでピアノの木の匂いと音の集合体に「森」を感じてるのね。そんな感じ。

私も子供の頃ピアノを習ってて、家では電子ピアノだったけど先生の家や学校の音楽室や発表会をするホールのグランドピアノはやはり鍵盤の感触から響きまで全然違ったなぁ。

(ていうかグランドピアノ一般家庭ではなかなか買えないよね…笑
部屋一室占拠しちゃうしね…笑)


そんな激しいドラマではないだろうなと思ってたけど、やはり私にはちと刺激が足りない内容ではあった(笑)
でもその分普段は映画観てて使わない部分の脳が刺激された気がする。

山崎賢人くんは何気に初見。
目がキョルンってしててかわいいですね。
黒目の大きい猫みたい。
演技も悪くない。

まぁ三浦友和や鈴木亮平と並ぶとやはり演技には拙さが見えたけど…特に無言のシーンでは差が出たね。
でも真摯に役に向き合ってるように感じた。彼アクションも上手なの?

というか三浦友和と鈴木亮平が良かったね。最初は「調律師?営業部長と係長の間違いでは?」と思ったけどだんだんそう見えてくるのはさすがの実力。
鈴木亮平の結婚相手だけは「ないわ」の嵐だったけどね(笑)!

主軸となるピアノ姉妹、「由仁(ゆに)」ちゃんと「和音(かずね)」ちゃんは本物の姉妹の女優さんが演じているんですね。
由仁(ゆに)は他パートが同時に同じメロディーを奏でることを意味する「ユニゾン」から来てるのかな。


なんとなく台詞から「あ〜小説っぽいうんうん」ってなるような映画ではちょっと浮く感じもあったけど、誠実に原作から拾い上げて作ったんだろうなという印象てした。

タイトルにもあり主人公のルーツなので森がやたら出てくるけど、そのシーンはもう少しはしょってもいいかと思った。

その会場の音の響き具合、演奏者の好み、全てを考えてピアノをセッティングするのが調律師なんですね。

(城田優のキャラ笑った…柳さんから言わせると「そんなわかってないよあいつ」なんだろうなぁw)

組織に属して働く以上は、主人公のやり方にはイライラする部分もあったけど
(個人的感情ばかりで仕事するな!
君の失態は君が責任を取れる範囲ではなく、組織の失態になるのだからホウレンソウをしなさい!!)
まぁ小説アルアルで彼をゆっくり見守り成長させてくれる土壌のある環境なので、まぁいいでしょう…(笑)


途中で出てくるお客さんちのワンコがめちゃめちゃかわいく、(飼い主がピアノ弾いてる横でリズムとってるの!感性の豊かなワンちゃんですこと!)当然泣いたよね。

最後の終わり方がとても綺麗で美しい広がりを感じたし、久石譲先生作曲×辻井伸行演奏のエンディング、これは映画評価を底上げしてしまいますなぁ。
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