フラハティ

マザー!のフラハティのレビュー・感想・評価

マザー!(2017年製作の映画)
3.0
「"楽園"にするの。」


アロノフスキーの新作でありながら、日本では劇場未公開ということで軽く衝撃を受けた本作。
聖書をなぞらえた?
無知なのでわからないです。笑

幸せな夫婦の元に訪れる一人の男。
"楽園"であった家が、段々と崩れていく。
ジェニファー・ローレンスを映すカメラが揺れるのは、その不穏さを表している。
ポランスキー監督のあの映画を彷彿とさせるね。

次々と巻き起こる出来事は不条理。
観客としても次の展開が全く読めず、カオスな世界観は面白いの領域へ。
なぜこうなった?
受け入れること、赦すこと、与えること。
どこに間違いがあったというのか。
なぜ思い通りにならないのか。
創造することはムダなことなのか。


本作は聖書のメタファーってことらしいんだけど、ちょっと無理やりに見えたり?
というか、家のなかで起きる出来事のリアリティさ(頑張れば起きないことはないレベル)が、後半では全くなくなっていくところが違和感。
それが作品の狙いだったとしても、さすがにあざとさが見えてちょっと受け入れがたかったかな。
良い意味では広大なメッセージが込められている。
でも悪い意味ではかなり強引な展開。
だって人間をこうも一括りにせんでもいいやんとは思う。
でもこんな人間しか創造できないっていう、それくらい神が無能という解釈にもとれて皮肉的でもあるよね。


僕は聖書の知識はないので、どっちかというと人の傲慢さを表した映画なのかなと。
あの家自体が地球の比喩だとするなら、移民問題を取り扱っていたり?とかも思う。
地球というのは与えられた場所。
なのに人間は身勝手な行動をとり、モノに執着し、争いが絶えず、愚かな行動を幾度となく繰り返す。
本作は、あの夫婦の家に見ず知らずの人間たちが現れたから観客たちも苛立ちが募っていく。
でも、地球っていう広い規模のことだと、「それはしょうがないこと」で誰もが終わらせる。
自分の身近なことじゃないと、人は自身を正当化し、うわべを取り繕うことしかしない。
だからラストに繋がっていくんだね。
このままではどうにもならないから。
今まで赦してきた。でもこれからは?


しかし言葉が通じるのに、相手に伝わってない不快感は半端ないね。
実際にそんな世界もあるんだもんなあ。
この世は不条理だから。
フラハティ

フラハティ