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マザー!のAirconのネタバレレビュー・内容・結末

マザー!(2017年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

かなりキツかった。
意味がわからずただただ奪われる存在の主人公に共感してしまう映画なので、観てる側は辛い。
唯一の救いはこれがなんなのかわからないということで、その謎を考える余地が常にあるということくらい。

最初は奇妙な来客→
パーソナルスペースの秩序が保てない、制御できない地獄って感じで、
夫の行動や訪問者の謎がある。

夫の行動は理解し難くて、
明らかに妻への配慮が足りていないけど、
これはよく見る光景でもあるし、
その極端バージョンといった感じ。
前半をそういう話と見ると、たんに不快。
でもここまでは妻にちゃんと共感しておいて不快感を味わっておくべきだと思う。

そこからだんだん、
分け与えることや赦すことの地獄→
これキリスト教の教えかっていう感じに思えてきた。
この救済観はユダヤ教でもイスラム教でもなくキリスト教のものだと思った。

信者(ファン)と夫(神)の行動が酷過ぎて、これはキリスト教に対する批判的な描写だと思った。
本来は地球と神と人類っていう意図らしいけど、
家を荒らす身勝手な信者とそれをひたすら赦そうとする夫(神)という感じで、
これがキリスト教だ、と言っているような感じがした。

子供が殺されても赦そうとするところとか、
極端だけどこういうことだよ、おかしいだろっていうメッセージかと思った。

そういうの抜きにしてみると、
全体的に夫が対等に妻のことを思ってないから起きている問題のように思えて、
単純に男尊女卑的な問題でもあるし、
創作することを1番にしてしまっているアーティストにありがちな問題でもあるし、
他人に良い顔して内側には我儘な八方美人的な嫌なやつにも思えるし、
割とよくいる妻にとっては最悪の夫だった。

そういう虐げられている状況を地球と重ねるのは面白いアイディアだなと思った。

キリスト教に関するメタファーみたいなものがいっぱい出てくるけど、
どこかでそういう話ってわからないとわけわかんないと思う。
夫の行動の謎も意味もわからないで最後のほうのあれは意味不明だと思う。

真ん中でアポカリプスって出てくるところでやっぱりメタファーなんだって思ったけど、
前半はそういうのも解らずに1人の人間(妻)としての気持ちに共感しておくのが重要だと思う。
あくまで1人の人間として夫のことを「嫌だ」と思って始めてキリスト教の神の批判になると思う。
(自分的には一番楽しめる気づき方したと思う)

最初から知っててもダメだし最後まで解らなくてもダメだし、
観る人がちょうど良い感じだといいんだけど、
日本だと楽しめる人を選びそうな作品。

この監督はちょっとキリスト教のこと嫌いなのかもって思ってたから、
そういうのもあったかも。

好きか嫌いかで言えば嫌いだし、
感情としては最悪だけど、
映画としては結構おもしろいと思うしすごいと思う。
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