エソラゴト

ハウス・ジャック・ビルトのエソラゴトのレビュー・感想・評価

ハウス・ジャック・ビルト(2018年製作の映画)
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今作はトリアー監督前作『ニンフォマニアック 』の謂わばシリアルキラー版。それぞれのエピソードの章分けや、ブラック度数高めのコメディ要素、主人公ともう1人の男性との対話形式でストーリーが進む点も似ています。

その対話の内容も一聴すると主人公と弁護士との接見のようにも聞こえますし、教会の懺悔室での神父とのやりとりのようにも聞こえますが、反響する話し声や微かな水音から何か不自然な違和感を感じさせる演出が施されています。

結局最後のエピソードでその人物は何者なのかまたどこで会話していたのかが明かされるのですが、その配役の妙にも感嘆させられます(ブルーノ・ガンツは今年2月に亡くなられているので今作が遺作となるようです…)

またパンフのトリアー監督自身の今作に対する発言集もなかなか読み応えのある面白いものでした。主人公ジャックの想像の遥か斜め上行く猟奇的な振る舞い並びに歯に衣着せぬ物言い等監督本人自身への邪推されがちな問いかけにもノラリクラリとかわしながらも物語の本質を語っていて、本作理解への(ほんのちょっとの)助けとなりました。

エグい描写の免疫や耐性が多少あるとはいえ、それ相応の覚悟が必要なのは承知の上で万全な体調で臨んだ今作。2時間半全く集中力も途切れず、激しい手ブレ映像にも身体的影響もなく何ならまだまだジャックの告白・独白を聞きたかったと思ってしまった自分…。今迄積み上げて来た常識や倫理観・道徳観がガラガラと音を立てて崩れていくのが分かるこの妙な感覚はオリバー・ストーン監督の『ナチュラル・ボーン・キラーズ』を観て以来でしょうか?

また劇中、印象的に挿入される天才ピアニスト:グレン・グールドにも興味がそそられ、早速CDを購入し毎日聴いています。そして、もしやあの驚愕の小銭入れや完成した歪な家のフィギュア等がキャラクターグッズとして売られていたら…と鑑賞直後に物販ブースを一応覗いてみましたが、それは流石になかったので安心したような残念なような(苦笑)