滝和也

ゆれる人魚の滝和也のレビュー・感想・評価

ゆれる人魚(2015年製作の映画)
3.5
美しき歌声を持つ
人魚姫はある日、
人間の男の子に
恋をします…。

ただ彼女の種族は人を食べて
しまう肉食だったのです…。

「ゆれる人魚」

グロテスクすら美しいと言う不思議なテイストを持つ、ファンタジーの中にリアルを組み込み、ミュージカル仕立てにしたポーランド製の異色作品です。

ある日、地上に上がる美しき人魚の姉妹。人間に変身することができるが水をかけると巨大な尻尾を出す能力を活かし、ナイトクラブのショーで人気を博す。そして、姉はベーシストと恋に落ちる…。妹は姉を心配しながらも…本能のまま人を食べてしまう…。

人魚姫としてのプロットは守りながらも、人肉食と言う凄まじい設定が組み込まれ、更に恋愛と性と言う切り離せない要素が描かれていくため、ファンタジーの中にリアルが生まれ、ミュージカルと言う非リアル要素とのバランスが更にこの作品を奇妙で不思議な世界に昇華させています。

だがその不思議な世界が、人魚姫の切ないストーリーを更に切なくさせていっています。

ポーランド映画自体、アンジェイ・ワイダの堅い作品しか見たことがなく、ちょっと驚きました。開放的な性表現やグロさ、幻想的でどこか懐かしい感じの楽曲と、このダーク・ファンタジーの世界にハマります(^^)

人魚の姉妹、シルバーとゴールデンを演じるお二人は綺麗な姿であり、どこか幼さを残すその姿にピュアなイメージがあり、その本能とのギャップの恐ろしさや二人の切なさ、悲しみが伝わりやすくなっています。

ただ中盤にややカオスな展開があり…置いてかれそうになりまして(T_T)。ミュージカル故に細かい説明や本来膨らませるべき所にそれがないのも気にはなるんです。

後…何故人魚の尻尾をアナゴの様な形であんなに巨大に…。リアルを飛び越えて蛇女ゴーゴンに…。まぁ怖さを表現するシーンではかなり効いてましたが…。

グリム童話然り、ファンタジーの中に隠されたグロさと言うものは存在しており、親和性があるものだなと感じます。デルトロに近い感覚ですかね(^^)
滝和也

滝和也