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赤線地帯のkoyamaxのレビュー・感想・評価

赤線地帯(1956年製作の映画)
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女の知らない女の世界。
男の知らない女の世界。

売春禁止法に揺れる夜の街

「たった一人であやや映画祭」の一環で鑑賞^^;

お色気満載な遊女=エロス的なイメージを掻き立てられるものの、

敷居を跨ぎ、描かれるのは、
貧困女子の悲喜交々。

何かを削って生きている女たち
それぞれの身の上がある。。
その生き様に寄り添いすぎず、淡々した切り口で描いています。
ダークかと思いきや、職場の井戸端会議の雰囲気もあり、
女性たちの元気な仕事場という感じがあります。

表面的にはだいぶドライなんですけどね、
ただ、内面的には怪談に通じるものがあるというか。
奥底に漂う、虚しさ、悔しさ、やるせなさというかね。
そこで命を削って生きる人の諦念に似た
思いに寄り添う鎮魂的なムードもありました。



群像劇なので想像を超えて無邪気な京マチ子、
諦念からの色気を迸らせる木暮美千代、色々な人が出てどの方も魅力的。

とりわけ、男目線世界の中で女の性をむしり取られていく中、男から容赦無くお金をふんだくる決意をした、したたかなあやや。
その理由も描かれているのですけど、「祇園囃子」のような心を搾取される境遇から精神的に乗り越えたのだというバックボーンを思わせて泣けます。
(キャラに繋がりはないと思いますが。あやや繋がりで。)

個人的にはバックに収まる煙突の煙と相まって、印象的な三益愛子と息子とのやり取りがこの映画のテーマを象徴するものと思いました。


複数人のドラマを語りつぎ、
情念、やるせなさという複雑な思いをさまざまな角度から徐々に積み上げていき、そこに生きる女性たちの一つの心の叫びとして、集約させていくのはさすがの構成でした。

テルミンみたいなドロドロヒョロヒョロする怨念みたいな音楽にも合点がいきます^^;

全体的に独特なペーソスがあるのですが、嘆きやぼやきにもどこか愛嬌があるのがリアリズムというか、100%元気には絶対ならないけど、絶望にひれ伏すことなく生きていかなきゃね。と思わせるエネルギーがありました。
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