結局カレー

ヘルタースケルターの結局カレーのレビュー・感想・評価

ヘルタースケルター(2012年製作の映画)
2.4
着実に人気と実績を積み重ねていた中、突如表舞台から遠ざかることになった女優・沢尻エリカの5年ぶりの復帰作としてはウマすぎる題材。どれだけ非難されようが彼女の美貌は圧倒的に美しいと思うんだけど、その美と精神の崩壊をこうして演じることは「もう怖いものはなにもない」って言い切ったようにも感じる。

美容中毒ともいえるリリコは全身整形を施し自分自身を美しく着飾る。ヘルタースケルターを体現するような精神と理性の乱れから「美への執着」がいかに人を追い込み人生を狂わせるかがわかる。題材が題材なだけにセンセーショナルな演出が目を引くけれど、まぁ描かれているものは総じて薄っぺらい。でもその薄っぺらさこそこの作品の本質なんだろうな。欲望のまま美しさを追い求めキャリアや名声のためには身体を開き自分の自尊心を満たすために他者を振り回して優越感を覚える。世間に消耗品としてみなされることに苦慮しているけど、結局自分も自分をその場しのぎの消耗品として生きてきちゃってるんよな。だから何も残らない。あぁリリコは可哀想な人だな、と同情する。

蜷川美花監督ということでらしさ全開の色彩感で作風にはあってたと思う、上面の美しさという意味でも。まぁ薄っぺらいさもこの作品らしいと言いつつも、やっぱりリリコという人の奥底まで描いてほしかった気持ちもある。「強いからきれいになれるんじゃなくて、きれいになれば強くなる」って言葉だけは好きだったな。自分の信念がある人間はどんな風貌でも美しいから。
本人の演技力云々より2012年「主演・沢尻エリカ」であることに価値があった。