カツマ

静かなる復讐のカツマのレビュー・感想・評価

静かなる復讐(2016年製作の映画)
3.8
スペイン映画のサスペンスはあっさりしている。あっさりと人を殺すし、淡々と血が飛び散る。そして、そのドライな狂気がとても魅力的だとも思う。
この映画はそんなスペイン色が色濃く出た『復讐』その一点に焦点を絞ったサスペンススリラー。本国の映画賞(ゴヤ賞)で作品賞を受賞するほどの高い評価を得た作品だ。復讐を軸にした悲しみの連鎖の落としどころはどこなのか。死をも覚悟した男の執念の8年間の顛末やいかに。ラストも果たしてそれでよかったのか。あのラストカットの後にもう一つのストーリーが待っていそうな、そんな余韻が残っています。

この映画は覆面の男たちが宝石店強盗から車で逃亡するシーンから始まる。何人かはそのまま逃げおおせたが、運転手のクーロは出会い頭の車とクラッシュし、逮捕され投獄される。
それから8年が経った。クーロの妻アナは彼女の兄フォントの経営するBARで働いている。そこにいつしか物静かな男ホセが常連として顔を出すようになった。彼はアナに次第に惹かれ、2人は愛し合うが、実はホセにはもう一つの別の顔があった。彼はある目的のためにアナに近づいていたのである・・。

物静かな男ホセはとても復習の鬼には見えない。むしろ心優しい男なのだろう。だが、そんな善良な男がひとたび狂気にかられた場合のリアルを感じさせる冷酷さがとても怖い。彼は淡々と遂行する。そう、まるで顔色一つ変えずに。何を考えているのか分からない人間というのは恐ろしいものだ。その恐ろしさに触れてしまった運転手のクーロがどんどん哀れに思えてくるのが不思議だった。彼の妻のアナの心情の変化と共に、ラストシーンの緊張感と戦いながら鑑賞してもらいたい作品です。
カツマ

カツマ