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狭き門から入れの小のレビュー・感想・評価

狭き門から入れ(2008年製作の映画)
3.5
テアトル新宿で開催の「日本・香港インディペンデント映画祭2017」で鑑賞。『FAKE』と同時上映。『FAKE』はやっぱり笑っちゃう。初回は驚愕のラストだったけれど、今回はどこが『FAKE』か自分なりに納得できたかな。

1週間の特集上映のうち、3回(日)足を運んだうちの2回目。観た映画は選んだわけではないけれど、どれも「雨傘運動」に関連するもの。今の香港を知るには「雨傘運動」とその背景を知ることが欠かせないのだろう。

「雨傘運動」は2014年9月26日に始まり2014年12月15まで続いた反政府デモ。2017年3月の香港トップを決める行政長官選挙について、中国共産党が新たな選挙制度を発表したのに対し、香港の学生たちが「(中国の体制に批判的な)民主派の立候補が事実上不可能になった」と激しく反発。中心街に座り込む大規模な反政府デモ活動を実施した。

背景にあるのは、1997年の返還から50年間は「一国二制度」のもと高度な自治が認められているにもかかわらず、中国政府は、愛国心を育成する教育プログラムや言論統制など支配力を強めようとしていること。

また香港は貧富の差が大きく、中国からの資本、観光客流入で、物価、不動産価格が上昇し、貧困化する若者は将来への希望を持ちにくくなっていることも、中国・香港政府に対する不満の根本的な要因となっている。

本作はとてもメッセージ性の強いエンターテイメント作品。タイトルからして聖書の言葉で、「楽な道よりも困難な道の方が報いがある」みたいな意味らしい。

ラジオで社会問題を取り上げ、香港政府や中国に批判的なことを話す番組のパーソナリティーの牧師、元警察官の若者と彼の同期の警察官、スクープを狙う女性カメラマン(公式ウェブでは新聞記者というのがこの人かと)が、弁護士の殺人事件で出会う。そして事件の背景には中国官僚と香港不動産企業の癒着があることを知り、これを何とか暴こうと奮闘するサスペンス。

底流に感じるのは、中国政府批判に対する裏からの攻撃、香港における経済界や、官僚上層部といった体制派の中国への忖度。牧師たちはそれに抗おうとする者たちの象徴であるとともに、彼らを鼓舞する存在なのかな。

中国支配の流れを身を任せ、長いものに巻かれる方が楽だし、多少は裕福な生活ができるかもしれないけれど、人間の尊厳を保ちたいのであればそれではダメだ、みたいな。

関連のない3グループのシーンが、入れ代わり立ち代わり切り替わるので、ボンヤリしていると置いてきぼりになるかも。ラストはカタルシスというよりは、これからも厳しい戦いを強い意志で続けないと民主的な香港は維持できない、みたいな感じ。

体制にかなり批判的な内容の映画だけれど、製作は2008年。トークショーで監督が「中国からの締め付けは直接はないが、スポンサーが付きにくいといったことはある」と話していた。さもありなん。
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