B5版

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書のB5版のレビュー・感想・評価

3.1
大きな権力と戦うというのは恐ろしい。
本丸が自分の住まう国ともなると尚更。
それも自他ともに凡庸な人間だと考えているような70年代を生きる女性が。
「たかが報道の理想」のために。

新聞屋たちが使命のもとに集った史実ベースの熱い話なのだが、やや物語の立ち上がりが遅く、尻上がり的に熱を帯びてくため、スピルバーグ監督作にしては盛り上がり所が半端に感じる。
もう少し前半はわかりやすさを重視してもよかった気がする。

正直タイムズ側のファーストペンギンを追う方がよりドラマティックではと思うし、世界を揺るがすニュースを描いた枠では『スポットライト 世紀のスクープ』に全体の完成度は到底及ばないと感じたが、
理想と現実、使命と利益を天秤にかけた経営者側の判断を描写したこの映画はユニークだ。

主人公は七十年代アメリカで史上初の新聞社の女性発行人。
序盤の真面目そうで、一歩引いた弱腰の雰囲気、奥まったキッチンで食事をこさえてるのが似合う、いかにも良き母親と評されるようなメリル・ストリープ演じるキャサリン。彼女の印象は終盤にかけてどんどんと変化していく。
作中のシーンで、女から男、男から女に分断が可視化されたゾーンを泳ぐように突き進む場面があるが、意味が最初と最後で全く異なる描き方がグッときた。
男と女のどちらの世界からも異質と捉えられた彼女が惑い、疲れ、悩んだ末に腹を括り、自らの力で渾身の一手を決断した。
一級紙で活躍する他の男性達と横並びに、裁判所の表口を堂々と闊歩するまでに至るまでの成長過程、並の男が怯む決断を果たした女傑の姿が同時代の女性に残す鮮烈、こういう熱い描写監督巧いよね。

最後ウォーターゲートに繋げるのもまた歴史の巡り合わせの面白さを感じるところですね。
ワシントンポストとニクソンの因縁はまだ続く…
B5版

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