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地獄愛の消費者のレビュー・感想・評価

地獄愛(2014年製作の映画)
4.2
・ジャンル
実話ベース/サイコホラー/スリラー/ドラマ

・あらすじ
夫と死別しシングルマザーとして暮らす中年女性、グロリア
病院の霊安室に勤める彼女の生活は仕事と育児のみの味気ない物だった
そんな彼女は友人、マデリーンに出会い系サイトを勧められミシェルという男性と会う事に
初めは消極的なグロリアだったが知的でユーモラス、そして積極的でロマンチックな彼にすっかり惚れ込んでしまう
その後、彼は金の無心をした後に去ってしまうが久々に愛を感じた歓びを捨て切れない彼女はミシェルを捜索
他の女性を自分と同じ様に口説く彼を発見し、その正体を知る事となる
ミシェルは詐欺師だったのだ
しかし真実を知ってもグロリアの愛が冷める事はなく、彼女は娘をマデリーンに預け恋人でありながら共犯の関係に…
だが金を騙し取る為とはいえ他の女性と関係を持つミシェルに独占欲に溺れた彼女が我慢など出来るはずもなくとうとう標的となった老女、マルグリットを手に掛けてしまい犯行はより過激な物と化していく…

・感想
ファブリス・ドゥ・ヴェルツ監督による“ベルギーの闇3部作”
今作は前作「変態村」に続く2作目
物語は1947〜1949年にかけて20名以上の犠牲者を生んだ結婚詐欺を伴う連続殺人事件の犯人であるレイモンド・フェルナンデスとマーサ・ベックという実在した夫妻、通称”ロンリーハーツ・キラー“を元に描かれた物となっている

昨日鑑賞した同じ事件をより事実に基づき担当刑事の孫自ら監督して製作された「ロンリーハート」よりも評判通りかなり露悪的且つ気持ち悪い世界観でなかなか強烈だった
3部作における前作「変態村」と比較しても分かりやすく、静かに表現されたグロテスクさも印象深い
中年女性や老女の性的描写もなかなかに露骨で生々しく「X」や「Room for Rent」等に近しい物があるのでそれらが好きな人には刺さる作品だと思う

またそういった直接的な描写以外にもグロリアとミシェルの共依存やそれが崩れていく様子、母性愛と性愛と幼児性が入り混じったグロリアの人物像、2人の狂気の背景のリアルさなどの何とも言えない気持ち悪さの煽り方も巧い
ミュージカルシーン、インダストリアルな劇伴、エンディングのダークウェイヴな楽曲など音楽面の歪さの表現も好みだったしそれでいて音楽の量自体は最小限に抑えられているので「グッドナイト・マミー」の様なじわじわと鬱な空気を滲ませていく感じがまた良い味を出している

所謂Disturbing Movieが好きな人には超オススメ
強いて言えば死体処理シーンのモザイクだけは無い方が良かったかなぁ…
それ以外は見たい物をちゃんと見せてくれるし良かった
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