レオス・カラックス x アダム・ドライバーがどうなるのか気になって鑑賞。
LA x エンタメ業界人 x ミュージカル、とくると「ラ・ラ・ランド」や「アリー スター誕生」を思い起こす人も少なく無いのでは。
アリーの方は観たことが無いのでなんとも言えませんが、「ラ・ラ・ランド」の雰囲気が(オチはともかく)好きだった人にオススメできる映画かは悩ましいところ。レオス・カラックスの作品らしく登場人物には暗い痛みが常について回っていて、恋愛の火傷で痛いとかロマンスでの傷心のようなものを想定していると思わぬ角度から殴られることになるだろうからです。
繰り返される"never cast your eyes down the abyss"(深淵に目を向けるな)のセリフに象徴されるように、この映画は深淵に目を向けてその不安のサイクルから逃れられなくなった、夢か現かわからない恐怖の中で主人公がもがく映画です。バッドトリップのようなものと考えてもいいかもしれません。
それでも映像が綺麗なのは、綺麗な街にある綺麗な家に住んでいる綺麗な人たちの話だからでしょう。
アダム・ドライバーはクレジットでクリス・ロックにSpecial Thanksを捧げていますが、コメディアンパートのインスピレーションの元だったのでしょうか。コメディアンは日常から政治まで身の回りのことを観察し批評する仕事だと思いますが、ややもすればいろんなものに毒を吐いてしまいがちなコメディアンという職業は実は世の深淵に目を向けてしまうのかも知れません。