ぼのご

蜂の巣の子供たちのぼのごのレビュー・感想・評価

蜂の巣の子供たち(1948年製作の映画)
4.5
戦災孤児になった子どもたちの、歳に不相応な悲しみや険しさを含んだ表情が切ない。役者は起用せず実際の浮浪児を役にあてているらしいので、重みが違う。映画の冒頭に「この子たちにお心当たりはありませんか」という一文が画面いっぱいに表示されます。

でも子どもの純粋さ素直さは失われずにあって、可愛らしかったりクスッとくる場面もあった。

子どもたちを優しく導いてくれる偶然出会った復員兵のお兄さんが素敵。働いて生きる術を教え、勉強を教え、タバコを盗んで吸った子には怒るのではなく何がいけないのかを考えさせる。諭し方が素晴らしかった。

でも野球をやってる子どもたちに混ざろうとしたら逃げられた戦災孤児の子たちに「きっと気持ち悪かったんだよ。気持ち悪くない子どもにならないとね」って言ったのは衝撃だった。現実の世知辛さが伝わる。

海で亡くなったお母さんへの想いから海を一目見たいと望む病気の仲間を背負い、海の見える山の頂上まで登る場面が圧巻。だけどその結果が……。

悲しいこともあったけど最後は大円満。構図が良いのか一つひとつの場面が絵になってる。映像も物語も美しくて最高だった。ちょっと気になったのは、ずっと流れっぱなしの音楽が効果的じゃなかったことくらい!笑
これだけの作品を作っているのに、清水宏監督の知名度はなんで圧倒的に低いんだろう……。

まあ監督自身「たとえ少数でもいい、わかってくれる人に見せる、そんな映画を作りたい」と言っていたみたいなので、ある意味必然なのでしょうか。そのスタンスにも好感を持ちました。
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