朱音

ノーゲーム・ノーライフ ゼロの朱音のネタバレレビュー・内容・結末

2.4

このレビューはネタバレを含みます

十の盟約によって一切の争いや生殺与奪が禁じられ、全てがゲームの勝敗によって決められる盤上の世界(ディス・ボード)と、世界をそのように作り変えた唯一神テト。
「ノーゲーム・ノーライフ」という作品において根幹を成す設定であるその世界観が如何にして生まれたのかを描いた前日譚。なるほどなぁというシナリオメイクに感心しつつも、原作やアニメ本編を観ていない人にはさぞチンプンカンプンな物語であろうと思う。
神々や異種族が唯一神の座を巡り、圧倒的な武力と技術力を用いて戦いを繰り広げる世界の中で何の力も持たない人間族が命を懸けて足掻き、知恵を振り絞って大番狂わせを演じるというのは本編にも通ずるところ。だがそのロジックであったり、煩雑な設定情報が飛び交う展開は相変わらず理解し難く、勢いでなんとなく見せ切ってしまおう感は拭えない。
心を持たない機械人形が主人公との交流を経て人の心を理解し、自己献身を行うプロットは古典的で目新しさはない。むしろ性急すぎて雑に感じられもする。だが少なくとも原作かアニメ本編を観た者であれば主人公の空と白の前世を連想させるキャラデザと、キャスティング等によって本編から引き継いだ2人の絆を勝手に補完してしまうのでめちゃくちゃ泣ける。
ぶっちゃけ反則だと思うけれど泣けるもんは泣ける。
また声優さん達の演技の素晴らしさが、より観る側を惹き込んでくれる。

単体の映画作品として観た場合、決して出来の良い作品ではないしアニメーションとしての作画や動きは全体的に良いが、特に感動できるほどではない。一般的な劇場用長編アニメの及第点の範囲だろう。
「ノーゲーム・ノーライフ」という作品のファンであれば一見の価値はあると思う。私は楽しめた。
朱音

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