かじられる

アイスと雨音のかじられるのレビュー・感想・評価

アイスと雨音(2017年製作の映画)
4.0
殴られた気がした。空が並列に見えたから倒れているのが分かった。

「お前はいつも足りてない」

74分ワンカット。少年少女の舞台に対する想いが燃焼する。切れ目ない毎日は一生を綴る。生きるのも舞台に立つのも変わりはない。場面に応じて演技でやり過ごし、本音をどこかに吐き捨てる。

スクリーンから届く熱波。
声を発しているか?
手が届く限り伸ばしているか?
言い訳と分析で立ち止まっていないか?
限界と突破の目測を誤っていないか?

こぼれていく。こぼれていく。
十代の持つエネルギーを抱きとめる度量がない。ただ若さという魔法陣を言い訳にしない純度の高さに圧倒され、胸に痛みが走る。

踊れ、叫べ、諦めるな、過去も未来もない小宇宙よ。

「カット」の声がかかって安堵したのは、舞台上のキャストではなく、僕らだ。「卑怯だ」なんて言葉の裏で日々のあり方が問われていく。立ち上がって無傷であることに安心するくらいなら、いっそそのまま横になっていた方がいい。

演劇は続く。たとえ観客がいなくても刹那は覚悟に押し迫る。

情熱は高貴な狂気。
かじられる

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