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シェイプ・オブ・ウォーターのkuuのレビュー・感想・評価

4.5
ギレルモ・デル・トロの世界観(「ダーク・ファンタジー」空想世界が主体であるファンタジーとは異なり、あくまで現実世界が主体となってる)を映像化するのに色々と趣向を凝らしてある映画やった。
ファンタジーで可愛いのを描きたいのか、グロいのを描きたいのか(ギレルモは子供の頃からホラー映画が好きだったそうすから、その所も随所に散りばめられてた)ビミョーな温度だけど、それも趣のひとつかと。
時代背景(1962年冷戦下のアメリカ)のセットも服装も実写で描くために余すことなく仕上げられてた。
イライザは夜間清掃員の中年女性。
夕方に起きては仕事場に向かう。
同じ毎日を過ごしていた。
自分はここで思い出したのは、「シシュポスの神話」と云うA・カミュのエッセイ作品す。
作中に「朝起きて、会社に出勤し働く、帰宅し、食事を摂り眠る。同じリズムで過ぎ行く《日月火水木金土、、、》」だいたいが、こういう道をたどっている。
ところが、ある日、何故? 
ちゅう問題が、頭に過る。
すると驚きの色に染められたこの倦怠の中で全てが始まる。
彼はこの、人間の心理をついた感情が、重要なんやと力説しているが、将に『シェープ・オブ・ウォーター』の物語はそこで展開する。
主人公のイライザを演じるサリー・ホーキンスは可愛いなぁと思えたりに見えたり、そうじゃないように見えたり不思議な女優さんに感じたなぁ。
音声障害で話せない孤独で内気な主人公が、恋した(謎ある)彼を助けるって決めたときが、カミュの述べる人生での重要な場面だ。
日々懸命に働いている。
せや、ある日突然「これが人生というもんなんか?」と、questionmarkか、よぎる。
それをカミュは、意識の目覚めと定義してるけど、
こうした折に我々は、この唐突な疑問符にたいして「こんなもんなんかなぁ?」って、無意識に了解し、意識の目覚める前の日々にもどるか、あるいは、不意に過ぎ去った『?』を真摯に受け止め、人生について、深く考えるかのどちらかじゃないかな。
イライザはそこで立ち止まり、考えて行動に出た。
感動。
世の中はどうかなぁ?アメリカ人は?日本人は?
アメリカも日本も、戦後の荒れはてた中から、先人たちが築きあげてきたこんにち。
アメリカや日本は奇跡的な発展をとげ、豊かな文明を保つことがでけたのは承知の事実やけど、
日本においては戦後は民主主義の国となって、高度成長を過ぎ、人びとは自由どゆたかさを謳歌しているようにみえてるけど、その影で取り戻すことのでけへん大事なモンを失なってきたんちゃうかな。
「放棄か、再起か」カミュが問うものに、イライザは再起を選び行動する。
感動。
その行動は是非とも映画館に足を運び観てほしいです。
アメリカの夜を照らす街灯、朝日が差し込む部屋、雨に打たれる埠頭、温かいよき時代の(よき時代はタイムリーには知らないが)ハリウッド映画の世界。
イライザが働くラボは旧くてオドロオドロシイホラー映画の感じ。色んな映画へのオマージュを感じられます。
Unable to perceive the shape of You, 
I find You all around me. 
Your presence fills my eyes with Your love, 
It humbles my heart, For You are everywhere.
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