ハル

シェイプ・オブ・ウォーターのハルのレビュー・感想・評価

3.7
幻想的なオープニングだったので、おとぎ話でも始まるのかと思ったら、色んな意味で想像を裏切られた。

60年代のレトロな雰囲気に暗めの色調が滲み、そこにエロ・グロ・冷戦時代の緊張した空気なども合わさって、幻想的だけどダークな世界を作っている。

よくよく考えてみると、登場人物のほとんどは、マイノリティである。

主人公の女性は発話障害だし、半魚人は異形の怪物だし、隣人の画家はゲイだし、同僚の掃除係のオバハンは黒人だ。

そして、この作品は人間の女性が怪物に恋をする話なんだが、これもよくよく考えてみれば、マイノリティ同士の恋愛なのである。美女と野獣とかシザーハンズとか、どちらかが異形でもう一方は普通という組み合わせはあったと思うが、マイノリティ同士の組み合わせ(ハンデを持った人間の女性と異形の怪物の組み合わせ的な)はありそうでなかったのではあるまいか。

そこから感じるのは、マイノリティへの深い愛である。

実際、この作品は愛に溢れている。逆にマジョリティ(多数派)を代表するストリックランドが醜く描かれている点が笑える。国家や社会に帰属する多数派より、社会から忌み嫌われる怪物が美しいというのは、大いなる皮肉ではないか。
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