新潟の映画野郎らりほう

アナと雪の女王2の新潟の映画野郎らりほうのレビュー・感想・評価

アナと雪の女王2(2019年製作の映画)
4.5
【血の収支報告】


近隣諸国との軋轢。少数者への差別/排斥。少子高齢と財政難。原発事故と長期に及ぶ廃炉作業。人口爆発/食糧危機。そして、温室効果ガスとマイクロプラスチックが齎す気候変動/環境破壊―。
何れも 私を含めた前世代/前々世代にその端を発す諸問題だが、返済(解決)を先送り 膨れ上がった負債は、今や堰堤決壊の瀬戸際に瀕している。


「私達の世代は、地球を守ることに失敗した」―グテーレス国連事務総長(2019)


非常に理不尽で心苦しく思うが、私達世代が真摯に向き合わなかったそれら膨大な負債は、その選択/決定に携わる事無かった筈のあなた達次世代が最も担う事となる。
何故なら あなた方次世代は、罪を犯した私達前世代の「記憶が刻まれた液体」=“血”を継承しているのだから―。

戦争当事者ではないから、原発推進当事者ではないから、差別/排斥当事者ではないから、罪を犯したのは大人達/前世代だから『だから私達には解らない ーUnknownー 』では 最早済まされぬ次元に私達は生きている。


識らねばなるまい ―常識/正義をエクスキューズにした罪の歴史(未知)を―。
支払わねばなるまい ―見ぬふりしてきた負の収支報告を―。


劇中「魔法」と言及される技術:photograph。
では 私達世界の様々な技術も、罪の結晶=呪いであると同時に エルサと同じ「魔法」である筈だ ―世界をより良くする為の―。


終極。駆けて行く彼女の姿は正面から捉えられ、映画を観ている私達観客の方へ向かってゆく ―スクリーンを飛び出さんばかりに―。

恰も この映画が、2019年の世界と“地続き”であると言わん様に―。




《劇場観賞》