かつきよ

ライオン・キングのかつきよのレビュー・感想・評価

ライオン・キング(2019年製作の映画)
3.3
元が不朽の名作天下のディズニーのビッグタイトルなので、もちろん面白かったです!

しかしながら、これはフルCGでリアル路線でリメイクする意味が全く感じられなかったです。
私の需要がおかしいのかもしれませんが、それにしても、こんなに評価が高いのはちょっと不思議です。
原作が強力なのはもちろんですが、じゃあ、仮にライオンキングの原作が存在しない世界で、ディズニー最新作としてこの2019年版が公開されたら名作と呼べるのか?というと、これ単体で見てもそこまでセンセーショナルに評価されないのではないかなぁと思ってしまいます。。。原作ありきというか、、、。

もちろん感動しましたし、あーいいなって思うシーンもありましたが、ほぼ全ての要素がアニメ版で十分だった
というか、アニメ版の方がわくわくした、楽しかった、よかったなって思ってしまったんです。。。

コミカルにデフォルメされたアニメならではの技法を使って動物の生態、サークルオブライフのテーマを展開していた94年版と、リアルを追求し実写のようなCGを展開した19年版ではそもそもコンセプトの根幹の部分がずれてしまっていると思います。大袈裟にいうと別物映画。
翻訳の再翻訳みたいな。リアル世界をアニメナイズドしたものをリアル寄りに戻す意味は?細部が間違って出力された感じが本当に再々翻訳っぽくないですか?

初めてライオンキング2019年版で見たよって人がいたら、ぜひアニメ版を見て欲しいです。全然違うから!そう思ってしまいました。
具体的にどの点がそう思ったのか、長くなりますが詳細をセクター分けして解説していきたいなと思います。

●キャラクターデザイン
19年版の子シンバかわいい!子猫みたい!!
すごくリアルで、本物の動物を見ているみたいでした。すごい!
でも、ライオンたちのデザイン、リアルに寄せすぎて、見た目だけでの区別がつきにくくなってまそんか?子供の頃ならシンバとナラ、大人になってからのナラとサラビ、ムファサと大人シンバも、、、よく見ると違うけど、原作アニメのハッキリしたキャラクタの書き分けに慣れてるとびっくりするくらい同じ感じ。

実際の動物って、19年版のキャラクターよりももっと個体差ないと思うし、映画はこれでもデフォルメしてるんだろうけど、、、それライオンキングに求めてる人いる?って感じてしまいます。
特にひどいなと思ったのはスカー!!!!傷はあるし、痩せこけてるから見分けはつくけど、原作スカーを知っているとみんなエェーーー!?って叫んだはず。
確かにムファサと兄弟感は出たけど、、、
原作のTheディズニーヴィランという鋭く邪悪な目つき、ムファサと血繋がってんの?と思える浅黒い(オレンジがかった)毛並み、特徴的な黒いタテガミ、痩せこけているけどどこか艶かしいボディライン、、、全てが失われています!!
幼少期のたくさんの人の性癖を狂わせたというあのスカーはどこへ!?🤔
ただの見窄らしくて年老いたライオンに見える。あの妖艶さは何処。

あとは、みんなのデザインがリアルに寄って似通ってしまったことで、アニメ版に比べてキャラクターが映る場面の色彩が減って、見ててもっさりしたり停滞している印象になってしまった気がします。

加えて、リアルな動物にしてしまったので、表情が乏しくなったなと思います。もちろん、動物のCGモジュールとしては表情豊かだと思います。でも、原作アニメにあったディズニーならではの表情の豊かさは失われているように感じます。
ムファサの例のシーンの表情とか、苦悩するシンバとか、アニメで見直してやっぱりいいな、、、と思いました。
当時のアニメーション技術だってリアルな動物の作画をすることは別にできたと思います。しかし、ディズニーナイズドして、リアルな生態を感じる動きでありながら、アニメ独特のコミカルな動きや表情を見せてくれるあのデフォルメデザインを作り上げたことが、アニメ版の一つの評価点、良さ、だと思うのです。それをこんなにリアルにしてリメイクするって、ただの技術の見せびらかしというか、最先端技術をふんだんに使ったよ!すごいだろ!っていう意識が率先してて、もともとあった良さとか、楽しむ心みたいなものが失われている、捨てている気がするのですよ。。。むーん

●ミュージカルシーン
うううーん。楽しかったし曲はもちろんいい!
けど、リアルすぎる!はっきりいってちょっと物足りないなと思ってしまいました。
ちょっとはっちゃけてるけど、どこまでもリアル路線。リアルな風景に毛を生やした感じ。重厚感とか、リアル感は増したので、そういうのを求めてる人にはとても良いと思うのです。でも、、、

一番ひどいなと思ったのは、私のお気に入りである「準備をしておけ(Be Prepared)」!
ヴィラン曲です。19年版は、薄暗いハイエナの谷でスカーが威張ってるだけ。確かに迫力はあるけど、重々しいけど、なんか、平坦でつまらない!!一つのアレンジとして物々しくて良かったと思いますよ。でも、準備しろ!準備しろ!って言ってるだけじゃん!!!
19年版しか見たことない人はぜひアニメ版を見てみて欲しいです!!!ここだけでもいいから!!

19年版は谷から瘴気?みたいなものが溢れ、その中で闊歩しハイエナを支配するスカーのディズニーヴィランらしい妖艶な演出からはじまるんですよ!!尺も全然長いし!
地形が変形し続け、動き回る動き回る!!ハイエナの軍隊感とか、骨を被ったりするコミカルな演出、骨を振り回す影が動き出す亡者みたいに見える演出も子供ながらに不気味で好きでしたし、最後はマグマが溢れ出すみたいな赤い光の中で隆起する崖の上で雄叫びをあげるスカー!!闇の王感が半端ない!!骨で演奏するみたいなシーンも好きだし、金管楽器っぽいストリングスもわくわくした。そういうものが、一切合切消えてる!!!!!!!!なぜ!!!一番残念で泣いたシーン!!!!
歌詞も「燃えてぇ〜」とか、「準備はできた〜!」とか、日本語歌詞結構色々変化があって好きだったのに、19年版だと本当に「準備しろ」しか言わない
支配者感も少ないし、悪のタレントみたいなものも感じない。。。
まじスカーの扱いなんなんですかー!
それに伴ってコミカルなハイエナの感じも無くなった。というかハイエナはもう完全に別キャラみたいになってますよね。前みたいにバカ三人衆みたいな頭たりてない感じが良かったのに
みてて面白かったですし!
沢城さんは好きなので19年版も沢城さんだけ好き。正直スカーより強そう。

そのほかにも、ハクナマタタのシーンなんかは、スポットが当たるシンバとか、みんなでどんちゃか騒ぐいわゆる「アニメ的」な演出が一切なくなってたり、、、
ただの動物の物語だったけど、それでもありえない動きとアニメ的な演出でわくわくできたアニメ版の盛り上がりが一切合切なくなっちゃうのはなんでなのか、、、私が好きだったディズニーアニメミュージカルはどこへ、、、

原作ではサラッと演出された部分が長尺で会話掘り下げられたりしてたのは良かったですが
ハクナマタタの後とか、みんなの会話が結構追加されててすごい仲良し感が増しててよかったですし
でも虫のシーンは、虫テロすぎる。そこリアルにしないでくださいって多分みんな思ってるぞ!!!

プンバァを最後囮にするシーンとかの会話も増えてて19年版の方が面白かった。
でもそのあと急にフラダンス踊ってしまうシーンはカット。やっぱりアニメ的な演出はリアル寄りに矯正させられてる。。。
なんか寂しいぞっ

●新曲

スピリット!すごくよかったです。
新曲か?と思って調べたらまさかのビヨンセ歌唱だったんだ!?と思って、この楽曲から急遽英語版に切り替えました。歌うま
佐藤二郎のプンバァハマり役で良かったけど

●その他・まとめ

昨今のディズニーリメイクに関して、全く同じストーリーでリメイクするのには個人的には大きく分けて三つの意義があると思ってます。

①まず一つ目は、リアルの人間が演じることによって「実写映画」としてアニメとはまた違った良さ、新鮮さを感じられること。
アニメはアニメで良いですが、生の人間が演じることでしか与えられない感動とか感覚もあると思います。リメイクによってアニメの作り直しではなくて実写化してるのはその路線かなって勝手に思ってました

②二つ目は、昔の作品をリブートすることで新しい人にも受け入れやすくして、入り口を広げること

③現代の技術でミュージカルシーンなどの演出をパワーアップさせられる

です。。。
①に関しては、もうこれ全部CGだし論外ですよね。リアルで統一することによって違う迫力や説得力は出たかもしれません
むしろデフォルメとか、アニメ的な演出が苦手寄りな人にはこういう方がいいのかな?
でも、このお話ってもともとデフォルメされたデザインと同じく生態系やストーリーの温度感も現実に対してかなりデフォルメされていると思います。ライオンがプライドランドで国王してるとか、草食獣もみんな国民?で調和した世界が実現してるとか、そんなのファンタジーみたいなもんじゃないですか。イノシシとミーアキャットとライオンが仲良くなる、ライオンが虫だけで大人まで育つ、戦闘シーンはあるけど血が出たり生々しい捕食シーンが無い。
こういうのは全てアニメのタッチと同じでデフォルメされてたからこそ統一感があり均衡が取れてたと思ってます。なので、今回みたいにビジュアルを極限までリアルに近くなってしまうと、アニメ版では気にならなかったそういう「ファンタジー」な要素が突然浮いてしまうように感じました。
そうはならんやろ、、、的な。
アニメのままのストーリーをやるならキャラデザももっとディズニーらしいコミカルにするべきだったし、リアルでやるなら話をもっとシビアな感じに組み替えるべきだったと思います。一言で言えばバランス崩壊。。。

②に関しては、間口は広がったかもしれませんが、どうしてもアニメ版の方が良かったと思ってしまうから残念すぎます。
実写もいいけど、アニメもいいよ、っていう感じではなく、明らかにアニメの方がいいとしか思えないので残念、、、。
正確にいうとどちらの方がより良い、という論争は良くないと思うのですが、先にも言った通り、アニメらしさを武器にしてた94年版とリアルを追求した19年版は大袈裟にいうと別物映画。。。

③パワーアップしてない

ライオンキング原作厨って誹りをうけてしまうでしょうか、、、。
ふるいものにしがみつく老害の意見なのかなぁ
でも、私個人としては、94年版は歴史関係なく面白いと思える名作映画だと思いますが、19年版は確実に「古く」なると思います。モード(流行)に流されてる気がする。

もう一回、準備をしておけ!見よう
かつきよ

かつきよ