磔刑

ランペイジ 巨獣大乱闘の磔刑のレビュー・感想・評価

ランペイジ 巨獣大乱闘(2018年製作の映画)
3.4
「ゴリラは人類の友、チンパンは人類の敵」

「怪獣がアメリカの大都市をぶっ潰しながら戦う映画だと!?スゲー面白そうやん!!」って動機で観に行ったのだがその期待通りの内容で満足な一方、決して期待値を上回らなかったので不満も少なからずある。

クライマックスのバトルシーンはアドレナリン出まくの超破壊の連続で出し惜しみや手抜きを感じさせない内容で大満足だ。この手の作品にありがちな決闘シーンを夜にして製作費を抑える姑息な手段を取っていないのも良い。本作の主役の一人であるお猿のジョージも初登場のシーンで端的かつユーモアを交えながらしっかり観客の感情移入させている。VFX100%で構成される性質上感情移入できるか不安であったが、その不安を見事に払拭し、キングコングを彷彿とさせる親しみを感じるムービーモンスターに仕上げている。序盤でジョージとロック様(観客)との間で形成された絆も物語の最後まで物語に効果的に働いている。
勿論ロック様ことドゥェイン・ジョンソンもランペイジ達に挟まれながらもそのスター性を全く損なっいない点も高評価に値する。ランペイジ達を中心に画面構成するとどうしてもロック様の大きさが豆粒大になってしまうのだがそこは流石のロック様。豆粒大になっても「あっ!あの画面の角でチョロチョロ動き回ってるのはロック様だ!!」と豆粒大になりながらも観客の意識がロック様に向かう程のカリスマ性を発揮しており、ランペイジ達と遜色無い存在感だ。
まだブラックアダム化していないのもあって単純なパワー勝負では劣るものの、『BVS』でスーパーマン&ワンダーウーマンとドゥームズデイの戦いの間に挟まれ、あたふたするバットマンよりはずっと活躍している。つまりはロック様>バットマンと解釈して良いだろう。

今作の物語進行のテンポの良さは評価すべき点だが、猪突猛進過ぎるストーリーはラストのバトルシーンを薄味に感じてしまう要因でもある。怪獣バトルが主役なので人間同士のいざこざが物語のテンポを悪くしてしまう事はありがちでだが、今作の取捨選択はストイック過ぎる気がする。そのせいかロック様界隈で起こる事件や葛藤、問題、難題に対する答えや道筋、物語の進行、その全てがサクサクイージーモードで進み過ぎてストーリー性の弱さを感じる。
ロック様が銃撃され復活したのも何か理由があるのかと思ったが「急所じゃないから平気」って、それ十分化け物ですよ。個人的はロック様が巨大化する伏線かと思ったのだが流石にそれは無かったか。ロック様銀幕デビュー作である『ハムナプトラ2』での苦い思い出が蘇るしね。

あとこれが一番気になったのだが最終局面でロック様とジョージが共闘するのは熱い展開で良いのだが、ロック様のバックボーンを鑑みるとランペイジ達が街を破壊してるからと言って一方的に制圧して殺すって発想はどうなんだと思う。もうちょっと救ってやろうと努力しても良かったんじゃないだろうか?ジョージがセーフで他のランペイジ達がアウトの線引きが御都合主義的過ぎてロック様の博愛主義設定が血の通っていない只の設定になっており残念な限りだ。観客に共感させるように設定された人物像の筈がそのジレンマの雑念が少なからずラストバトルの没入感を阻害する結果となっており、脚本の粗さを感じざるを得ない。それに反してロック様が全く葛藤しないのにも少なからず違和感を覚えてしまう。

まぁ、考え無しに「ヒャッハー!!」するタイプの作品なので細けぇ事は気にしなくて良いし、考え過ぎなければ十分楽しめる作品ではある。個人的にはギャレス版『GODZILLA』や『キングコング:髑髏島の巨神』よりは小賢しい事をしていない点やバトルシーンの高揚感は本作の方が好みだ。主人公がタフでなければ務まらないジャンルなだけに如何に上記2作と比べればロック様が適任かがわかる。トムヒやアーロンの様なヒョロガリには荷が重過ぎたね。
続編を示唆するオマケが無いのも意外で製作サイドの妙なプライドとストイックさを感じる。B級映画ど真ん中の一作だ。
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