マヒロ

マイティ・ソー バトルロイヤルのマヒロのレビュー・感想・評価

3.5
アベンジャーズ内でも屈指の強さを誇るのに、屈指の存在感のなさを誇る…と個人的に思っているソーさん。主演映画もパッとしないし、前2作でも性格が定まっておらずキャラがブレていたり、強すぎるからか『エイジオブウルトロン』や『シビルウォー』でも放置気味だったりと、制作側も扱いに困っている感じがヒシヒシと伝わって来ていたんだけど、主演3作目である今作にしてようやく居場所を見つけた感があるなと思えるような作品だった。

『ラグナロク』というものものしい原題とは裏腹に、作品はコメディベースで常にふざけ続けている。同じコメディなMCUでも、王道な『アントマン』や狂ったようにギャグを連発する『ガーディアンズオブ〜』とは違い、なんとなくインディーズっぽい「ハズした」ギャグが多い印象。宇宙とか神とか言ってるのに、ノリはワイティティ監督の過去作『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』と全く同じというすさまじいギャップ。
完全にお間抜けブラザーズと化したソー&ロキには最早威厳のかけらもないが、愚直に自分のやることを信じ続けるという王道ど真ん中なヒーローのソーに、ただのいじられキャラなロキと、MCUのどのキャラにもない特色を得て、むしろずっと好きになれた。

元々監督が90分くらいの作品に仕上げたと話していたのに、完成品は結局2時間超えていたけど、そのゴタゴタの名残なのかヘラがアスガルドに到達する辺りまでの序盤だけは妙にテンポが早い。何か事が起きたらすぐに次の展開…という具合に矢継ぎ早に物語が転がっていくので、いまいち没入できなかった。せっかく出てきたドクター・ストレンジも、別にわざわざ彼が出なくても良いような微妙なお手伝いをしてそのまま去っていったので、いたずらに描写を回りくどくしているだけのように思えた。今後に繋げるために顔を合わせておく必要があったのかもしれないが。
戦闘シーンも、画面で起きていることに比べてどうもケレン味が薄いような気がして、あまり盛り上がれなかった。なんとなくザック・スナイダー的な、絵は派手だけど重さのないアクションという感じ。もっとギャグっぽく弾けてくれても良いのに、そこだけおとなしめなので余計に微妙さが目立つ。

ゆるいコメディとしてはなかなか面白かったけど、ヒーロー映画としての楽しさは少し足りなかったかな…という印象の映画だった。

(2017.150)[38]
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