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グッド・タイムのkuuのレビュー・感想・評価

グッド・タイム(2017年製作の映画)
3.6
『グッド・タイム』
映倫区分R15+.
原題Good Time.
製作年2017年。上映時間100分。

刑務所内で暴れた果てに病院送りとなった弟を脱出させようとする青年の姿を描く。
メガホンを取るのは、『神様なんかくそくらえ』のジョシュ、ベニー・サフディ兄弟。
『トワイライト』のエドワード役のロバート・パティンソン、ジェニファー・ジェイソン・リーらが出演する。

ニューヨークで暮らしている兄弟のコニー(ロバート・パティンソン)とニック(ベニー・サフディ)は、銀行強盗をお粗末に襲う。
当然、強盗は失敗に終わり、逃げるは恥だが役に立つが、逃げ切れなかったニックが逮捕されちまう。
やがてコニーは、投獄された弟が刑務所内で酷い目に遭わされた末に暴れて病院へと送られたのを知る。
コニーは彼を救おうと、病院に忍び込むが。。。ハチャメチャ、シリアスにハチャメチャやし笑うに笑えない。

はじめに余談ながら、タイトルの『Good Time』てのは、刑務所のスラングです。
良い行いをした囚人の刑期が短縮されることを指し、監督によると、
『コニーが刑務所で良い行いをし、グッドタイムで釈放され、それをこうして過ごすというのが裏設定だ。
バディ・ドゥレス演じるレイもそうだ。
刑務所の中ではいい時間と云うけれど、出所すると厳しい規則や追いつめられる機会があり、いい時間の時にいい時間を過ごしているわけではない。でも、刑務所よりはましだよ、それだけはね』と云うことを込めて作ったそうですよー。

今作品は、逆『わらしべ長者』的で、ゾラの『ルーゴン・マッカール叢書』やらバルザックの『人間喜劇』的で、悪いモンから悪いモンへと負の連続。

兄ちゃんのコニーは、基本的に弟のことを心配して真剣、滑稽までに真剣。
彼にとって卑怯なことは何もないかな。
意欲的で、頭の回転が速く(空回り気味やけど)、機知に富んでいる(知識が女ったらしに向くのは性癖かな)。
エエように頭使えばエエものを、食い物にする人間を見つける才能に全力投球してる。
状況が一変し、彼だけが無傷で残った時、妙に嫌な気分にならず同情心が多少なりとも芽生えたし、キャラの設定やら、演技はメチャうまいんやろなと思う。
でもまぁ、こないな展開なら、彼らの運命は必然やったように感じられます。
ただ、主人公のおかげで少し早く出来事が起きたに過ぎない。
なぜか、終始緊張しっぱなしになって肩が凝ったけど、間抜けな犯罪者たちは見ていて楽しくて、一瞬一瞬を夢中で食い入るように見ちまった。
今作品には、何を期待したらいいのか、まったくわからない。
わからないけど、何度か食い入った不思議な作品。
コニーは、騙して協力させた16才の少女(タリア・ウェブスター)に何らかの救いを見出すんかな。
無邪気な少女で素朴で好奇心旺盛な傍観者は、手先や犠牲者になるんやろか。
ペテン師コニーが誰かと遭遇するたびに、ホンマ妙に緊張が走る。
今作品は、推理を続けるタイトなストーリーを全く無視しても、面白い映画やと個人的に思いました。
巧みな撮影、音楽の使い方、全体のトーンとかが、この映画に独特の個性を与えてました。
そして、なんていっても演技。
パティンソンは、この地味な、しかし肉厚でニュアンスのある役柄で消えてしまう。
ジェニファー・ジェイソン・リー(ちょい役のコニーに利用されてる女子)、
『キャプテン・フィリップス』のバーカバー・アブディ、
コニーと微妙な同盟関係を結ぶ犯罪者役のバディ・デュアレス、
そして前述のベン・サフディとタリア・ウェブスターが、多くの素晴らしい瞬間を魅せてました。
なんか今作品が終わってほしくなかったかな。
それほどまでに、このクソで薄汚れた世界を見るのが楽しかった。
今作品は、ゆるっとスリルの滴を提供してくれました。
手に汗をかきながら、そして頻繁に、自業自得と思われる人々の犠牲の上に笑っちゃいかんような笑いが起こる。しかし、そこには優しさもある。
その核心は、愛についての物語でもあり、毒のような愛でもある。
今作品はメジャーな映画じゃないかも知れへんが、探しだして見合うだけの価値はあったかな。
今作品をもしご覧になられるときは、クレジットを最後まで見てください。文字がスクロールするように物語が続いていきます。
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