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リバー・オブ・グラスのskkのネタバレレビュー・内容・結末

リバー・オブ・グラス(1994年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

浅学にして監督・作品ともにろくに知らなかったのですが、filmarksのサムネ画像にもなってるシーンが妙に心に残って鑑賞
映像の質感から80年代より前かと思ってたんですが、これ1994年作なんですね

日常への不満が募った中で非日常への逃避を図るも、そこに待っていたのは大いなる停滞で、どこにも進めず漂流するだけの日々が過ぎていく…という感じでしょうか
犯罪を犯してしまった(?)男女2人の逃避行ということになり、それだけで本来はだいぶ非日常なはずなのですが、その中で滲み出してくる停滞感というかある一定のラインを超えられない感覚の表現(25セントが無くて有料道路をUターンしたり等)が格別 何か特別になろうとしても結局何にもなれない、というこの現実逃避の限界を見事に暗示していると感じます
全体としては何も大きなことは起きず、ダラダラと間延びしたペースで展開していきます 銃をなくした警察側の捜査も頻繁に描写される割にうまく主人公2人の展開とクロスしませんが、これはこれでクロスしちゃうと逃亡劇みたいな展開になってしまいますものね
撃たれた側の描写をばっさり切り捨てた最後の発砲シーンはあまりの思い切りの良さに驚き ついに一線を飛び越えた(多分)後は、やっぱりみみっちいことで躓いて漂流してしまいそうな、不穏な印象を感じさせる渋滞のラストシーンで幕を閉じます

こうした停滞の中で出現するいくつかのシーンの画角が見事で、空+高速道路、空+海、プールといった青系の画面の鮮烈さが強烈でした あと酒場のシーンが微妙な色気というかムードがある距離感ですごくよかったですね(プールでの発砲に至るまでのシーンも距離感が艶やかでドキドキしました)
車や主人公コージーの服もそうだし、全体として青が意識的に使われている気がします

最初のモノローグ形式での始まり方から、さては難解な映画か?と身構えたのですが、この映画に関してはそれほどでもなく、テーマも自分なりにある程度理解することができました
久々に映画らしい映画というか、しっかりした作品を鑑賞することが出来て満足です ケリー・ライカート特集の会期末に近いところで滑り込んでしまったけれど、他の作品も機会があったら是非鑑賞したいです
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