NM

ゲーテの恋 〜君に捧ぐ「若きウェルテルの悩み」〜のNMのレビュー・感想・評価

3.3
ゲーテと『若きウェルテルの悩み』の誕生までがモデルとなっている。
設定は原作と異なる箇所あり。
ゆったり始まり、後半からスピードアップしていったイメージ。
一応恋愛カテゴリーだが、ラブラブキラキラロマンティックではない。どろどろ三角形バトルでもない。恋愛物アレルギーの人も大丈夫。
原作を分かりやすいように凝縮した感じ。未読の人が大体のあらすじを知るのにも便利。

個人的には一人の女性が一方的に周りの不幸を全部背負い人生を捧げたように感じ少々もやもやする。一作ヒットしただけで急に態度を変える親も不自然に思う。これまでの状況からして二作目もヒットするとは思えないはず。振り返ってみると深くは描かれないもののケストナーはなかなか魅力的な人物像だった。

絶望していたはずのゲーテが急に舞い上がる様子は軽々にも見えるが、現実はこんなものかもしれない。目の前に突然絶望や希望が降ってくればそれに準じた反応をするものだろう。自殺しかけたすぐ後で天にも登る思いになることもありえなくない。反動で余計に嬉しかっただろう。あそこで死んでしまっていたらと思うと恐ろしい。


ゲーテ23歳。法学を学んでいたが試験に落第。
本当は詩が大好きで法学に興味がないが、かといって出版社は歯牙にもかけてくれない。

法曹界で権力のある父は、田舎にある裁判所での実習生の口を用意した。無事勤務できれば弁護士になれる。
上司のケストナーは若くして参事官。
彼のもとで仕事をはじめると、始めこそ信用はなかったが程なくして意外にも使える人材になってきた。
上司ケストナーはゲーテを気に入り、やがて友人として目をかけるようになった。
ゲーテは同居人である同僚とも親友になり順調な毎日。

そしてゲーテはシャルロッテという勝ち気な女性を見初め、二人は深い仲に。
ゲーテが彼女の家を尋ねてみると、父親、姉とその大勢の食べ盛りの子どもたちがいた。母はいないようだ。姉の夫も見当たらない。

今や右腕となったゲーテを、上司ケストナーが狩りに誘った。
雑談中ケストナーに意中の女性がいると知り、ゲーテはムードで責めると良いですよとアドバイスを告げる。
翌日ケストナーは、アドバイスのお陰で婚約が成立したとゲーテを激しくハグ。その夜の婚約パーティーに誘う。
ゲーテはシャルロッテを尋ねる予定があったので私も女性との用事があるのでと断る。その助成と既に深い仲になったことも話した。では仕方ないとケストナーは欠席を快く承諾。

だがケストナーが婚約したその相手とはシャルロッテ。
シャルロッテは自分が結婚すれば裕福なケストナーのおかげで家計が救われることを鑑み、一人悲しみ悩んだ末プロポーズを受け入れたのだった。

シャルロッテは急いで事情により婚約したからもう来ないでという手紙を出したが、ゲーテはそれを知らずにシャルロッテ宅を訪ねてしまい、婚約パーティーを目の当たりにしてしまう。
ゲーテとシャルロッテは咄嗟に初対面のふりをするが、ケストナーはその不自然な様子で全てを見透かした。

当然翌日から態度を変えるケストナー。
そして失恋で自殺してしまった同僚もついでに侮辱。これにはゲーテも憤慨しケストナーを殴る。
ケストナーはゲーテに決闘を申し込む。

ゲーテの弾は外れた。そしてケストナーは弾を外した。
ケストナーの射撃の腕は狩りの日に見た通り。勝利を確信し冷静さを取り戻してわざと外したのだろう。
決闘罪でゲーテのみ投獄。
邪魔者も消え、家では暖炉の前でお茶を飲みながら義父と何も知らない婚約者と結婚式の相談。

投獄中のゲーテは、これまでの失意と絶望験を一気にしたため『若きウェルテルの悩み』を書き上げた。
そしてそれをシャルロッテに郵送し、ゲーテが投獄されているであることを初めて知った。夫からはゲーテは旅行に出たと聞かされている。
原稿を読み、ゲーテが自殺してしまうと心配しシャルロッテが面会に来て叱りつけた。
だが現実は変わらないとも語る。
ゲーテはその原稿は焼いてくれと頼み、シャルロッテは承知し二人は別れた。

嘘をついた自分を許し家に帰ってきたシャルロッテを見て、涙ぐむケストナー。帰ってこないのではと心配したのだろう。彼もまた心からシャルロッテを愛していた。
シャルロッテはとっくに運命を受け入れている。
後日結婚式は無事行われた。

ゲーテは釈放され、父に連れ戻された。
実家に戻る途中、町の本屋が大混雑している。『ウェルテルの悩み』が知らぬ間に出版され、大ヒットしていたのだ。
それを知ると父はついに、作家としての人生を笑顔で認めてくれた。

ゲーテは愛を失ったが、その彼女のお陰で代わりにずっと欲しかった夢を手に入れた。
NM

NM