小松屋たから

ゴールデン・リバーの小松屋たからのレビュー・感想・評価

ゴールデン・リバー(2018年製作の映画)
3.5
フランスの名匠が撮った「西部劇」。序盤、画面の暗さも相まって人物造形とか舞台設定そのものが正直今一つよくわからなかったが、中盤にかけて、段々とそれぞれの感情の変化、成長が分かってくるとキャラクターたちを愛せるようになった。すると、俄然、面白くなった。

「西部劇」らしからぬ、ということになるんだろうが、でも、実際にあの時代の人間たちは、こんな感じだったのかもしれない。いつもカッコよく現れて、正義なり悪なりを、鮮やかに繰り広げて去っていく、というのはあくまでファンタジー。普通の人間が、精一杯頑張ってなんとかこのぐらいという様が、これまでの映画に無かったわけではないが、本作はやけに生々しくリアルで、そこが新しいということか。

歯ブラシと歯磨き粉に感激して、新式トイレに驚き、散髪して、馬の心配をして…。「らしからぬ」日常を描いているから、ヒューマンドラマとしては豊かで楽しい。「化学」の真偽はよくわからないが、追手とのやり取りも含め、あのように命を賭けている間、彼らは「生」を実感していたことだろう。

だから、これは、「西部劇」というよりは、西部を舞台にした、いい歳をした男たちの自分探し、本当の居場所を見つけたいと願う彼らの熱くも哀しい人生悲喜劇、として捉えれば、きっと極めて良質なアート系ノワールということなのだ。

ただ、正直、観る前は、邦題や役者陣の顔ぶれから、もうちょっと捻りのある騙し騙されの駆け引き、盗った盗られたの大騒ぎとかを期待してしまっていたけれど(笑)