リコリス

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それから(2017年製作の映画)
4.3
始まりは妻の用意した韓国海苔とかで、お粥?みたいなのを妻に見守られつつ食べる夫。5分で修羅場、10分後には状況判明。無駄に美しい夜景を撮る、電車に乗る、記憶に浸る…と、時折、古めかしい(ワザと?)音楽が此処ぞと鳴る。

ホン監督の私生活を知ると、日本の私小説全盛期の作家みたいで。ただし、しっかり細分化・虚構化して、セリフ、口調、表情、調度、その出来事の解釈、展開…日常ベッタリなのに、なんでこんなに面白いんでしょうか。

今回、見たのは二回目ですが、(こちらに記憶力の難はあるけれど)全く新鮮で飽きない。時間の密度が濃いのかな。

社長は誰に向かって言葉で防衛? 女たちの言葉は真っ直ぐで嘘がない。単純なことを言葉が取り巻いて複雑(そう)にしていくけれど、男は押されて本音がでて、相手がいない・言葉が使えないところで泣いたり意味のない行動に走ったり(韓国で男が、特に人前で泣くのは、かなりのことと聞いていた)。

いつものように同じ場所、同じ人物での違う展開バリエーション。

食べ物の場面が良い。韓国焼酎、それに、おかずが多いな〜美味しそう韓国。人間は共に食べる相手には無防備になるのかな。

タクシーの雪景色、ああいった突然の日常のギフトで何とか生き延びてゆく。ツキモノが落ちた後の清々しい漱石『それから』。
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