mimitakoyaki

それからのmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

それから(2017年製作の映画)
4.1
ホン・サンス大好きで、ほとんどの作品は観てるのですが、ようやく映画館で観れる日が来てめちゃくちゃ感激してます。
しかも4作品が相次いで上映ですからヤバイです!
楽しみ過ぎる!

まあ今回もホン・サンス節が健在で、社長、評論家といった肩書きは立派だが、不倫してて妻にバレるし、不倫相手とも上手くいかないしでグダグダなおっさんが主人公なんですね。

そして、ホン・サンスの新たなるミューズ、キム・ミニがその社長の小さな出版会社に新入社員としてやってきたのですが、初日から社長の妻に不倫相手と勘違いされて殴られたり、別れたはずの社長の愛人が戻ってきたことから、とばっちりを受けるアルムを魅力たっぷりに演じています。

本作は、ホン・サンス作品の中でも最もミニマルで、登場人物は社長、アルム、妻、愛人の4人のみ。
場所も、会社である出版社か会社の近くの中華料理屋での会話がほとんどです。
こんな最小限な設定でも、ちゃんと男のだらしなさ、ブレまくる弱さや、周りに流されずに自分の生き方を選べるアルムの芯の強さなんかがしっかり浮き彫りになってて、魅せてくれるんですよね。

ワンシーン ワンカットで2人や3人での会話をずっと長回しでそれぞれの顔を交互に捉えて、ちょっとした間や声のトーン、仕草や表情まで全てが生々しく、緊張感が醸し出されていたり、修羅場のシーンが多いだけに、そういう撮影スタイルがとても効果的だと思いました。

会話がとにかく多いですが、話す内容がしょーもなくて、ふと何見せられてるんやろう…という気持ちになって笑えてきたりするのですが、何気ない会話から、男と女の心の綾が浮き彫りになる作りが秀逸です。

「次の朝は他人」「自由が丘で」でもありましたが、本作でも時系列がシャッフルされていて、過去と現在が自由に行き来しながら、同じ会話が反復されておや?と思わせる巧みな作りで、そして、きめ細やかな美しいモノクロ映像も、キム・ミニの美しさをより際立たせていて、とても洒落ていました。

最後に夏目漱石の「それから」が出てきて、不倫を巡る物語という点で重なり合いながらも、いやいや、コレはそんな高尚な話でもないよとツッコミたくなるのですが、雰囲気は文学的な香りもあり、男女の下世話な痴話喧嘩を、よくオシャレにできましたね、という感じで嬉しくなりました。

あとの3作もとても楽しみです!
故キム・ジュヒョクさんが出ている「あなた自身とあなたのこと」は今回の上映には入ってないので、こちらの方も早く見れるようになって欲しいです。

47
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