Kaoru

ラブレスのKaoruのレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
3.5
愛のない人なんてどこを探しても絶対に絶対にいないと思う。

アタシのロシア映画のイメージは暗く寂しい作品が多いといったところ。とかくズビャギンツェフ監督の作品においてはその極みだと思ってるわ。

言っておくけれど、不親切な監督よ。多弁じゃないから、いろいろすげぇパスが回ってきて、あとは自分たちで好きに感じてっていう監督。だからこそ好き。

ところで、欧州では映画は第一級の芸術に位置されているのをご存知かしら。映画が商業と違う場所に置かれていることを羨ましく感じたりもします。とは言え誰も観てくれなければ表現者としても成り立たないけれど、観客にウケる作品に寄るのではなく、観客が作品を理解したいと努めるよう仕向ける。映画が民衆を育てるところが素晴らしいと思うわ。

話はそれたけれど、この作品。息子のアレクセイ君、ほぼセリフがないにも関わらずきゅんとくる表情がすごい。この年齢で顔で演技をするこの子は将来、すんごい俳優になるのではなかろうか。

両親から痛々しい暴力の虐待をされていたわけではなく、罵倒されたりするわけではなく、ただただ関心を持ってもらえなかった。マザーテレサが、愛情の反対は憎しみではなく「無関心」だと言われていたけれど、ホントそれ。ひょっとしたらひょっとして、暴力されることよりダメージがあるかもしれない。親が自分にしか興味がなく、自分を愛してくれる人にしか興味がなく、本当に愛されたい思っている子を疎ましく思ってしまうという。

ロシアでは最近、劇や映画などの芸術で汚い言葉を使うことが法律で禁じられたばかり。でもこの作品には親が「マート」(ロシア語でファック的なやつ)を多用してるの。実はロシアではこのままでは放映できず、編集が施されてるのだとか。そんな法律よりも、リアルな描写を取った監督がすごいと思うわ。芸術の醍醐味だなぁと。

ここまでじゃなくても、両親のこの感じは日本人にも十分当てはまると思うわ。親になったら携帯はほどほどにね。

暗く悲しい作品に、ボランティアの捜査救助団体ヴェラの存在があたたかく日を照らしているけれど、こちらもロシアに実在するリーザ・アラートという団体を模しているのですって。アテにならない警察に対し、市民が活躍しているというところに感動してしまうわ。

今でもアレクセイ君がどこか愛のあるあたたかい場所で元気に頑張っていてほしいなぁと思わざるを得ない作品。
ホントね、近い人への無関心は1番いけないこと。いろいろ心に誓ったわ。
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