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散り椿のumisodachiのレビュー・感想・評価

散り椿(2018年製作の映画)
3.2
木村大作監督の時代劇。原作未読。

享保15年。藩の不正を訴え藩を追われた瓜生新兵衛は、連れ添った末に病の床に臥した妻の最後の願いを叶えるため、故郷に戻る。そこで待っていたのは、かつての親友との因縁や、いまだ蔓延る腐敗しきった体制だった。新兵衛は核心に近づくが、大きな闇が彼を飲み込もうとしていた……。

こだわり抜いて選ばれたロケーションに、完璧に美しい映像。ただスクリーンを眺めているだけでも満たされる作品だ。それに加え、岡田准一の殺陣。もはや芸術の域では?と感じるほどに優美かつ力強いパフォーマンスで、見惚れる。全体に対して殺陣の分量がそこまで多くないのも、抑制が効いている。

ただ、ドラマとしては……どうしても【言葉】が引っかかってしまって乗れなかった。少ないセリフで展開していくのだが、そのセリフがどうにも現代的で。「約束って、享保15年の時点で普通に使われていた言葉なのかしら?」とか、「え、その和歌は詠まずに終わるの?だったらもうちょっと長く見せて!読むから!」とか、いちいち引っかかってしまって。ストーリーは非常にシンプルなので、例え言葉が古くても分かるはず。もしかしたら岡田准一ファンのことを考えて、ああいったセリフ回しにしたのかもしれないが……若い子でも分かると思うけどなあ。まあ、約束も昔から使われていた言葉なのかもしれないけれども(ちょっとググっただけでは分からなかった)

特に、新兵衛の義弟を演じた池松壮亮のセリフ回しが非常に現代っ子っぽくて、過剰に子供っぽく見えてしまった感がある。というか、もしかしてまだ子供の役だったのか?←本人の力量の問題とも思えないので。セリフ部分やストーリー部分をシンプルにして、映像への集中力を最大限に高めることが目的なのかもしれないが、ある意味で作品の視点となる役だけに、ちょっと損していたかも。(ちょっと疑問に思って原作の設定を調べたら、やはりもっと若い設定の役だった。黒木華の役どころも不自然だと思ったら、原作の設定では納得。岡田准一を主役に据える以上、年齢設定の調整は仕方がなかったのかもしれないが、このふたりに皺寄せが来た感じだ)

あと、散り椿の前で岡田准一と西島秀俊が対峙するシーンがストーリー上のクライマックスなのだが、そこはもう少したっぷりと見せてほしかった。ドラマの根幹を成す部分のはずだし、もっとなんかさ。表情とかさ。しばしフリーズするとかさ。なんかこう、人情的に盛り上げません?なんなら、泣いてもいいよ?という気持ちに。時代劇に対して、自分が意外とドラマチックな演出を期待しているということを発見した。

それにしても、チョイ役に至るまで名の知れた俳優が固めているのは圧巻。大御所の名の元には、これだけのメンツが集まるものなのだなあ。

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