カツマ

バンブルビーのカツマのレビュー・感想・評価

バンブルビー(2018年製作の映画)
3.9
交わらないはずの時空が交差する。80sロックとエンターテイメントの融合、青春映画とロボット映画のコラボレーション!まるで映画そのものが思春期の停滞感からの脱却のようで、どこを切ってもザ・スミスの繊細なメロディが溢れ出してくるかのよう。そこにあるのは突き抜けるための勇気、立ち上がるための絆。どこにでもありそうでここにしかない、奇跡のような友情物語が少女とその親友に新たな扉を開けさせる。

今作は『トランスフォーマー』シリーズのキャラクター、バンブルビーを主演に据えたスピンオフ作品。その分、スケール感はミニマルになっているが、少女との交流を軸にした成長物語となっており、青春ドラマとしての側面が非常に強い作品に仕上がった。ザ・スミスの曲をバックに暗くてジメジメした納屋からスタートする展開もロボット映画とは思えない!スピンオフというよりかは、独立したドラマ映画としても楽しめる作品だった。

〜あらすじ〜

そこはロボット同士が抗争を繰り広げる惑星。黄色いボディのロボット、B-127は仲間たちとの戦闘の最中、命からがら戦線を脱出し、地球へと送られた。それは来たる反撃のため、地球を根城に体勢を立て直す布石でもあった。
そして地球。時は1987年。18歳の少女チャーリーは父親の死から立ち直れず、家族ともギクシャクした毎日が続いていた。バイトでも上手くいかず、悶々とする彼女は中古のパーツ工場にて古ぼけた黄色いミニバンに出会った。
誕生日とかこつけて、店主からミニバンを譲ってもらった彼女は自らチューニングを行い、そのボロい車体を家まで走らせた。だが、その黄色いミニバンはただの古い車では無かった!何とミニバンはトランスフォームし、B-127へと姿を変え・・!

〜見どころと感想〜

ザ・スミスを筆頭に80年代の音楽を全面的にフィーチャーした音楽映画としても楽しめる作品だ。非常にテンポよく主人公の少女とバンブルビーとの交流を描いており、父親の死からなかなか立ち直れない主人公をバンブルビーが背中を押し続けるような、優しい物語となっている。敵のディセプティコンは主に2体のみで、バンブルビー一人で戦えるギリギリのラインに留まってくれているところも、バトル映画になりすぎない要因だったと思う。

大作のスピンオフに甘酢っぽいインディ臭を注ぎ込んだのは何者かと思いきや、映画『KUBO/二本の弦の秘密』で革新的な3Dストップモーションアニメを世に解き放ったトラヴィス・ナイトだった。アニメーターでもある彼を監督に抜擢したのも人選としては最高だったと思うし、大味で類似品を見つけやすい作品からは確実に脱却することができていた。

主演のヘイリー・スタインフェルドは完璧なキャスティング!彼女にはやたらとレトロなバンドTシャツが似合うし、根暗じみたオタク臭がしっくりくる(笑)
マイケル・ベイの専売特許のイメージがあったトランスフォーマーシリーズに新風を吹き込んだ清涼剤のようなスピンオフでした。

〜あとがき〜

トランスフォーマーシリーズはあまりしっかり追ってなかったのですが、このスピンオフは問題なく楽しめましたね。それほどに青春映画との配 配合具合が絶妙で、良くも悪くも大味なマイケル・ベイテイストから解き放たれた作品だと感じました。

まさかスミスの名曲がロボット映画で聴けるとは、ピクシーズも起用してくれたら100点満点でしたね(笑)
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